2017年03月09日 公開
2022年05月25日 更新
前回の記事「お金持ちはなぜヘッジファンドに投資するのか?」では、海外のヘッジファンドを日本で販売している証券会社の方へのインタビューを通じて、日本の投資家の課題とファンドの販売側の問題点について解説いたしました。
今回は、アジアに住む人々向けに海外資産運用のコンサルティングを行っているB社の社長とコンサルタントのお二方に、ヘッジファンドについてお話を伺いました。
B社はロンドンに上場している会社のグループ企業です。オフショアの資産運用や投資を専門にしており、ヘッジファンドを含む海外で取引されている金融商品を幅広く取り扱っています。日本人への対応は現地の日本人コンサルタントが担当しているそうです。
高橋 よろしくお願いします。まずは今回のテーマであるヘッジファンドについて伺いたいのですが、そもそも、投資信託との違いは何でしょう?
社長 日本における投資信託を我々は「ミューチュアルファンド」と呼んでいます。ミューチュアルファンドは、資金の運用に関して様々な制約や情報公開などが求められているという特徴があります。
基本的には買う(ロング)という手法のみでの運用となるため、価格の上昇局面でのみ利益を出すことができます。一方、運用手法が限られているため、ファンドマネージャーが運用を失敗しても、壊滅的な損失は発生しないようになっています。
高橋 なるほど、日本の株式相場のようにアップダウンの繰り返しですと、利益が生みづらいんですね。
社長 ヘッジファンドは投資信託の一種でもあります。私募という形での資金調達を行い、ファンドマネージャーは投資手法の制約がありませんので、預かった資金を自由に運用することが可能となります。「買い」だけでなく「カラ売り」(自分の保有していない株を証券会社から借りて売り、株価が下がったら株を買い戻すことで利益を確定する売買手法)を行うことも多いので、下げ相場でも利益を出すことが可能です。
高橋 下げ相場でも利益を出すことができる、というのがポイントですね。ヘッジファンドというと「ハイリスク・ハイリターン」の象徴のような存在だと日本では思われているフシがありますが、そのあたりはどのようにお考えですか?
社長 ヘッジファンドがハイリスク・ハイリターンと思われているのは、「ドリームファンド」と呼ばれたLTCMの破綻の影響が大きいでしょう。LTCMはノーベル賞受賞者たちを集めて金融工学理論を駆使した運用を行い、最盛期には年率40%ものリターンを誇りました。ただ、25倍のレバレッジをかけていたこのファンドは経済環境の変化により、あっという間に奈落の底に沈んでしまったのです。1998年のことです。
高橋 私がファンドの世界に興味を持ったのは、まさにこの頃ですね。
社長 現在では、LTCMのような極端なレバレッジをかけた投資スタイルは少ないと思われます。また、ファンドごとに投資方法が異なりますので、ハイリスク・ハイリターン、ミドルリスク・ミドルリターン、ローリスク・ローリターンと色々なタイプがあります。
高橋 ヘッジファンドがローリスク・ローリターンというのも面白いですね。
社長 ローリスク・ローリターンといっても、日本の投資信託のように下げ相場になると軒並みマイナスになるようなことはほとんどありません。
更新:11月23日 00:05