2017年04月19日 公開
そもそもノートを書き始めたのは、話すときのベースとなる知識を蓄えるためだった。
「根っからのお調子者なので、人懐っこく近づき、普通は突っ込めないところにも突っ込んでいくのが私の『型』。スポーツやバラエティの現場では、その『型』が功を奏した部分もあります。
でも、それだけでは通用せず、自分の力不足を痛感したこともありました。当時巨人にいた落合博満選手にインタビューをしたときの話です。私は野球の知識がほとんどない状態でキャンプの取材に臨み、『今年の課題はなんですか』と単刀直入に質問しました。すると、『課題なんていくらでもあるよ。だからキャンプをやっているんだ』とつれないひと言。『で?』と聞かれ、言葉に詰まりました。私の質問がざっくりしすぎていて稚拙だったことで、不勉強さが伝わってしまったのです。
話し方というと表現の技術に注目が集まるかもしれませんが、上手に話すために大事なのは下準備です。準備不足でインタビューに臨むと、どんなにトークのスキルがあっても通用しません。そのことを痛感しました。
自分の知らないことをノートに書いて勉強するようになったのも、自分の知識不足を痛感したから。毎日の経済の状況を書き留めるのは当たり前。経営者の方へのインタビューが決まったら、会社の決算はもちろん、相手の方の最近の発言や趣味なども調べます」
佐々木さんが人と話すときに意識しているのは、「観察」だ。
「会話は言葉を交わす前から始まっています。相手が部屋に入ってきたときのたたずまいや最初の挨拶は、まさしく情報の宝庫。フレンドリーな方なのか、厳格な方なのか。こちらの目を見ないのは、緊張しているからなのか、そもそもシャイな方だからなのか。そういった見極めができれば、相手のタイプに合わせてアプローチを変えることができます。
たとえば相手が緊張しているようなら、自分の失敗談を織り交ぜながら話してもいい。自分を落として笑いをとることで、相手の緊張感が解けて本音を引き出しやすくなります。
相手の話すスピードもチェックしたいですね。じっくり考えながら話す方であれば、こちらも質問のスピードを抑えて、あえて間をつくります。逆に速い方なら、そのリズムを邪魔しないようにテンポよく質問を投げていくことが大事。どちらにしても、相手が話しやすい環境をつくることが大切です」
相手の緊張を解く以前に、自分のほうが緊張してうまく話せない人もいるだろう。佐々木さんもかつて、大物政治家へのインタビューで頭が真っ白になった経験がある。
「最初の段取りで手違いがあり、収録現場の空気がいきなりピリッとしてしまったんです。私も雰囲気にのまれ、頭が真っ白に。無理やり質問をひねり出しても、そっけない答えしか返ってこなくて、さすがにパニックに。インタビューはかみ合わないまま終わってしまい、落ち込みました。
今振り返ると、相手が一番話したいことを質問すればよかったと思います。相手はそのとき、前任者から引き継いだ問題の後始末に追われていました。だからご自身が掲げている政策について語る機会が少なかった。その辺りを絡めれば、会話が弾んだのではないかと思います。
ただ、相手が関心を持っているテーマをぶつけるには、やはり事前の勉強が必要です。私がパニックになったのも、時間が足りず準備ができなかったことが大きな要因。準備万端整っていれば、私自身も慌てることなく心に余裕を持って臨めたでしょう」
リラックスして会話に臨むために、事前の勉強以外に大切なことはあるだろうか。
「人と話す前に口角を上げる練習をするといいですよ。作り笑いでいいから口角を上げて声を出して笑うと、自然に気分が盛り上がってきて、相手にも楽しい雰囲気が伝わります。
プレゼンなら、しっかり準備ができているなら、本番直前まで読んで練習するのではなく、いったんトイレにでも行って大きな声を出してみてください。資料を集中して読むと、どうしても体が内向きになって首筋から肩にかけて力が入ります。ここがこわばっていると声が出ません。姿勢を正して大きな声を出すと、力みが取れて発声が良くなります。ぜひ試してみてください」
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《『THE21』2017年4月号より》
更新:11月22日 00:05