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世に必要とされるから伝統は生き残る 江戸小紋職人 小宮康正

2017年02月10日 公開
2023年07月12日 更新

<連載>一流の職人に学ぶ「仕事の流儀」第3回

世に必要とされるから伝統は生き残る

「型付け」は、型と型の継ぎ目を合わせる瞬間が、一番緊張するのだという。

 伝統が生き残るためには、もう一つ大切な視点があるという。

「それは『世に必要とされなければならない』ということです。

 今でこそ着物はハレの日などに着る特別な装いですが、かつては普段着でした。しかし、洋服が浸透してきたことで、徐々に需要が減少し、今に至っています。

 つまり、消費者が生活の中で着物の用途を見出せなくなっているのです。それを仕方のないことと諦めてしまっては、需要はいずれなくなってしまう。『今の時代に生きる人々のために、何を作ることができるのか』を常に考えなくては、伝統は廃れてしまうでしょう」

 伝統を引き継ぎ、そこに新たな技術を付け加えていくという考え方は、あらゆる仕事に共通するのではないかと康正氏は指摘する。

「どんな業界の仕事も、それぞれの業界の伝統に支えられ、成り立っています。ただ、そこに胡坐をかいていては、いずれ世の中から必要とされなくなってしまう。業界の伝統を受け継ぎつつ、新たなニーズを開拓する。その両方の姿勢こそが必要なのではないでしょうか」

完成した生地。小宮家では、多くの型紙を所持しているため、さまざまな紋様の生地を作ることができる。

 

2017年3月号 一流の職人に学ぶ「仕事の流儀」

 

写真撮影 まるやゆういち

著者紹介

小宮康正(こみや・やすまさ)

江戸小紋職人

1956年生まれ。中学卒業後、父である康孝氏に伝統工芸である江戸小紋の創作を師事。24歳で日本伝統工芸展に初入選し、2010年には紫綬褒章を受賞した。現在は息子2人を指導し、江戸小紋の総仕上げを担当する。

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