2017年02月06日 公開
2023年05月16日 更新
それでは、「できたことノート」の使い方を具体的に説明しましょう。
最初のステップは、「日々のさなできたこと、より良くできたこと」を、毎日1~3個ずつ見つけて書き出す、という作業です。「食事をきちんと噛んで食べられた」「部下に笑顔で挨拶できた」といったささやかなことでかまいません。他の人と比べるのではなく、自分として「できた」と思ったことを書いてください。
次のステップは「内省」です。1週間ごとに、その週に書き出した「できたこと」の中から1つを選び、振り返るのです。どれを選ぶかは、直感で決めるのがいいでしょう。直感で選んだことは、本人が「こうなりたい」と思っている目標や理想と関係しているものだからです。
選んだら、その出来事の詳細を書きます。そして、「なぜできたのか」を分析してください。これを繰り返していると、「なりたい自分」のイメージが明確になってきます。
たとえば、「TOEICで550点を取るための勉強をeラーニングで始められた」という「できたこと」の理由を分析すると、「昇進のために550点が必要だから受講を考えていたが、外国人とコミュニケーションを取りたいとも思ったから」といったことが出てきます。すると、「自分は外国人とコミュニケーションを取ることに価値を感じているのだな」ということに気づけます。
そうしたら、次に「今、素直にどう感じているか」を書きます。「点数が取れるようになっても、実際に外国人と会話ができるか不安だ」といった具合です。
新しい行動を起こすためには、「嬉しい」「悲しい」「誇らしい」「不安だ」「腹が立った」などの感情が不可欠です。だから、「できたこと」に対する気持ちを素直に書くのです。
この感情を踏まえて、最後に「次なる行動」を書きます。「次はこうしてみよう」という新しい行動の工夫点を書きます。ただし、前述のとおり、大きな変化に対しては現状維持バイアスが働いてしまうので、「これならできそう」と思える内容に留めるようにしましょう。たとえば、「SNSをする時間を減らして勉強時間に充てよう」といった具合です。
以上のステップを毎週繰り返すうちに、「なりたい自分」に近づいていくことができ、自己肯定感が高まっていきます。すると前向きになります。前向きになれば、あらゆる行動が変わります。失敗ではなく成功に意識が向きますから、「これを習慣にしよう」と思ったことが、挫折せずに習慣化できるようになるのです。
《取材・構成:林 加愛》
《『THE21』2017年1月号より》
更新:11月25日 00:05