2017年01月05日 公開
2023年05月16日 更新
――確かにインターネットは社会を大きく変えました。ブロックチェーンがそれと同様のインパクトを持つというのは、どういうことなのでしょうか。
野口 これは「インターネットでできなかったこと」を考えてみるとわかりやすいでしょう。確かにインターネットは、情報を地球上のどこにでも、ほぼコストゼロで送ることを可能にするという革命を起こしました。しかし、インターネットでもできなかったことが2つあります。
第1は、「経済的な価値を送ること」。そして第2は、「信頼を確立すること」。
この2つを、ブロックチェーンは可能にしたのです。
――今でもインターネット上での送金は行われていますし、認証システムなどもありますが……。
野口 たしかに、たとえばAmazonで本を買うときには、クレジットカードを使ってインターネット上で送金ができます。しかし、実はこれは、非常に無理をして送金しているのです。
まず、我々は相手がAmazonだからこそクレジットカード番号を教えるわけですが、そのサイトが本当にアマゾンなのかどうか、見た目だけでは判断できません。まったく同じように作られた成りすましサイトかもしれません。
そこで、インターネットでは「SSL認証」という仕組みを使うことで、「相手は間違いなくAmazonである」と証明するようにしてきました。
ただ、この認証を取るにはコストがかかります。事実上、大企業にしかできないと言っていい。また、クレジットカードを使った決済には、通常、決済額の2〜4%の手数料がかかります。
買う側はふだん気づきませんが、こうした認証に関わるコストやクレジットカードの手数料を、事業者が負担しているのです。そしてそれは価格に転嫁されたり、仕入先を買い叩くことで補われている。その部分でアコギな商売をする会社もあります(笑)。
つまり、現在のインターネットを使った送金システムは非常に無理のあるもので、かつ膨大なコストがかかり、それを結局、我々が負担しているのです。
――インターネットでは、情報をほぼコストゼロで送ることはできた。けれども、お金など経済的な価値を同じように低コストで送ることはできなかったわけですね。
野口 ところが、ブロックチェーンを用いた仮想通貨、ビットコインにはそれができる。なぜ、できるのか。これは非常に長い説明になるので、とりあえず後回しにしましょう。
従来のインターネットでできなかったもう一つのこと。それは信頼性の確立です。
インターネットで通信している相手は、本当にその人なのか。インターネットには常にその問題がつきまといます。今開いているページが本当にAmazonなのか、Amazonのなりすましサイトなのかわからない、という問題です。それどころか、ネットの向こうにいる相手が犬だとしても、我々にはそれを知るすべがない。たとえ本人が書いたものだとしても、誰かが途中で改竄しないとも限らない。
信頼が確立できないということは、非常に大きな問題でした。インターネットの登場によって情報を送信するコストが下がり、社会がフラット化すると期待されていたのですが、それが実現できなかった理由の一つはここにあります。
ところが、ブロックチェーンは「そこに書かれている情報は唯一の正しい情報である」と言える仕組みなのです。つまり、インターネット上での信頼の確立が可能になる。これも、なぜそうなるのかは非常にややこしい説明が必要ですが……。
ともかく、安いコストで経済的な価値を送ることができ、そこに書かれていることが正しいと言える。いままでインターネットが実現できなかった2つのことを、ブロックチェーンは実現したのです。まさに「革命」です。
――その初めての試みがビットコインであったということですね。ブロックチェーンが画期的なことはわかったのですが、なぜ「信頼できる」と言い切れるのでしょうか。
野口 一つ、たとえ話をしましょう。もし記録を改竄されないようしっかりと残したいなら、紙に書き記すより石に刻むほうが確実です。
では、すべての記録を石に刻めばいいかというと、それは非常に大変なことです。膨大な時間もかかります。
ブロックチェーンは、あたかも石に記録を非常に素早く書き込むようなことを、電子的なしくみで可能にした。だから信頼できる……最も簡単に説明すると、このようになります。
ただ、もちろんこれは正確な説明ではありません。非常に面倒な話になりますが、ちゃんと説明しますか。
――理解できるかどうかわかりませんが……とても大事な話だと思うので、お願いします。
更新:11月22日 00:05