2016年11月10日 公開
2022年09月08日 更新
日本のビジネスマンは欧米に比べて生産性が低く、それが長時間労働につながっていると言われている。バリバリ仕事をしながら夕方には帰路につく世界標準の働き方との差は、仕事観や人生観とも関わっているようだ。
Windows95の生みの親の1人であり、ベストセラー『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』(文響社)で自身の「ロケットスタート時間術」を公開している中島聡氏に、長時間労働脱却のヒントをうかがった。(取材・構成:川端隆人 写真撮影:長谷川博一)
※本稿は、『THE21』2016年12月号特集「今より1時間早く仕事が終わる働き方」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
なぜ、長時間働いてしまうのか。その根底にあるのは、「自分や他人の時間を大切にしないカルチャー」だと中島氏は指摘する。
「本当に忙しくて残業をするのはしかたがありません。でも、忙しくもないのに、上司より早く帰ることができないから会社にいるとか、『忙しいふり』をするために夜遅くまで残っているような人もいますよね。
『早く帰るのは気まずいけれども、遅く帰るぶんには誰も文句を言わない。だから、なんとなく遅くまで仕事をする風潮ができてしまっている』という職場は多いと思います。そういう職場だったら、僕だって帰りづらいと感じますよ。
米国のカルチャーは、こうした日本のカルチャーと全然違っていました。忙しい人は朝7時に会社に来て、集中して働くのです。すると、5時に帰っても、かなりの仕事ができます。
こうした働き方をするのは、『どんなに忙しくても、夕食だけは子供たちと一緒に食べる』というような、家族重視の文化があるからでしょう」
それぞれの会社の風土だけでなく、文化的背景までもが影響している日本人の長時間労働。個人で頑張ってなんとかするのは難しいようにも思えてしまう。
「確かに、会社にいる時間ではなく、成果で評価するシステムに変えるといった、会社側の取り組みも必要でしょう。一方で、個人としては、もっと自分の時間を大切にするべきです。
生きている時間はたかだか100年。その人生をいかに充実させるか。そう考えると、時間を大切にしたくなるはずです。
充実のさせ方は人それぞれですが、僕の場合は『面白い仕事をする』ことで充実させています。自分にしかできないこと、自分が得意なことだけをするのです。自分が不得意なこと、自分では役に立てないことはしないようにしています。
たとえば、自分が出席しても本当に役に立てるとは思えないミーティングには出席しません。出席した人にあとで内容を聞けば十分です。
Eメールの返信も、気をつけないと膨大な時間を使ってしまいます。僕は、集中して仕事をするときは、Eメールを見ません。それで半日や1日返信が遅れても、『ごめんなさい。僕はこういう仕事の仕方だから』と言います。
『米国ではともかく、日本の職場でそんなやり方はできないだろう』と思うかもしれませんが、やればできるものですよ。先日も、ある人に『午前中はメールの返事をしないようにしてみたら』と勧めました。
最初は『できない』『ムリだ』と言っていましたが、『思いきってやってみたら、意外と大丈夫だった』ということです。
どうやら、日本には『メールは1時間以内に返信しなければいけない』とか、『ミーティングにはとりあえず出席しなければならない』といった強迫観念があるような気がします。
それでお互いに束縛しあっているところがある。みんながそれぞれ、自分の時間と他人の時間を尊重すれば、長時間労働の問題は解決すると思います」
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更新:11月22日 00:05