2016年10月07日 公開
2022年10月27日 更新
こうして理路整然と解説されると、「分類しない」ことは理にかなっていると納得できる。なぜ私たちは、「整理とは分類である」という思い込みから抜け出せないのか。
「その理由は明白で、分類は動物の本能だからです。動物はエサを見つけたら、食べられるものと食べられないものに分ける。かつては人間にとっても、安全な野草と毒草を区別することが重要でした。つまり分類は、動物が生きるために必要な作業だったのです。
ところが、その本能を捨てるべき時代が来てしまった。今や私たち人間は、本能に反するほどの高度な文明社会に生きています。むしろ、本能に従っていては生きられない時代と言って良いでしょう。しかし多くの人は、動物の本能をいまだに引きずっている。それは何億年にもわたって受け継がれてきた遺伝子なので、今さら分類をやめろと言われても簡単にはいかないのでしょう。
私にも、書類や情報を分類しようと試みた時期があります。しかし、すべて失敗した。いわば整理の劣等生だったからこそ、『分類しようとするのが、そもそもの間違いである』という本質に気づくことができたのだと思います」
『話すだけで書ける究極の文章法』
野口悠紀雄著
講談社/1,620円(税込み)
人工知能による音声入力機能を用いて書いた本。野口氏の仕事スタイルを一変させた、仕事が驚異的に進む音声入力の使い方とは。
《『THE21』2016年11月号より》
更新:11月22日 00:05