2016年09月23日 公開
健康志向の高まりやシニア層の増加が要因かと思われるが、最近、どこの書店でも「散歩」コーナーが盛況だ。
東京の下町歩き、京都の路地裏歩き、横浜の歴史散歩といった「定番もの」から、「銭湯を巡る」「廃墟を訪ねる」までバリエーションも豊富。せっかくなのでその中から、「普段の自分だったら絶対に買わないであろう散歩本」を選び、読んでみることにした。
で、選んだのがこちら。
『東京で探してみました、素敵なパリを。』
我ながら見事に「普段なら買わない本」が見つかったものだと思う。
「お前がパリかよ」という店員さんの視線を感じつつ購入し(気のせいだと思いますが)、近くのカフェでクロワッサンでも食べながら読もうとしたが、やはり「お前がパリかよ」という視線が気になり、結局、自宅で読むことになった。
本書の内容は基本「店紹介」だ。
レストランや雑貨店、インテリアショップなどから、アテネフランセや欧明社のような著名スポットまで、「店の中にいるとまるでパリのような場所」と、そのこだわりを紹介するというもの。
「この通りがパリっぽい」みたいな内容も入っているかと期待していたので、多少肩すかし。
本書の最高の褒め言葉はこの「まるでパリ」や「フランスにいるよう」というセリフなのだが、残念ながら店内から一歩出るとどこも「こんなのパリじゃない」という感じなのだろうか。
ただ、考えてみれば「パリっぽい街」はどんなものか、と言われると困る。「アメリカっぽい街」や「中国っぽい街」なら、日本にはいくつもある。最近なら「ミャンマーっぽい街」すら東京にはある。
でも、青山などオシャレな場所はあっても、それが「パリっぽいか」というと、確かに違う気がする。それは東京だけでなく、パリ以外の世界の各都市に関しても、そう感じられる。世界各地にある「リトル・パリ」と呼ばれる街でも、「ヨーロッパっぽいな」とは思えど、「パリっぽいな」とは思わなかった。
そこがパリの個性であり、すごさなのかもしれない。
パリの風を感じるため、紹介された店に行きたいのだが、どの店もハードルが高くていまだ為し得ていません。
執筆:Y村(「紀行」担当)
更新:11月23日 00:05