いざ物件を探すとき、どこに気をつければいいのだろうか。失敗しない物件選びのコツとは。
■どんな種別の物件がいい?
いつまでにいくら欲しいかによって、選ぶ種別はおのずと決まる
「1棟アパートを買いなさい」などのうたい文句はすべての人に当てはまる一般論ではなく、目的別のテクニック論です。物件の種別を選ぶ前に考えるべきは「いつまでにいくら欲しいのか」、つまり、自分が目指す収入額と時間軸。そこを明確化すれば、買うべき物件はおのずと決まってくるでしょう。脱サラを考えている場合、そのときに今の年収の倍くらいの金額を家賃収入として得る必要があります。たとえば、今、月収50万円で5年後の脱サラを目指すのであれば、毎月20万円の家賃収入がある1棟物件を、5年間かけて1棟ずつ買い進める計算となります。何を買ったらいいかではなく目的から逆算して考えてください。
■物件の見極め方は?
まずは、どんな人が住みたいと思っているかを知ることから
失敗しない物件を選ぶには、次の2つの要素をリサーチしましょう。まず、性別や年齢、社会人か学生かなど、どんな属性の人が住みたいのか「入居者像」を知ること。それを知るためには、その物件に長く住んでいる人、つまりリピーターの属性を割り出すことです。次に、最寄り駅から同じ徒歩圏内にある競合物件に勝てる「強み」、つまり入居者像が魅力を感じるモノがあるかを探ります。その際、周辺をくまなく歩き回るリサーチは必ずしも必要ありません。今はインターネットで地方の不動産事情をチェックできますし、だいたいの当たりがついたら、地元に強い不動産業者から聞き取りをすればいいのです。
■中古か? 新築か?
1棟目で経験と資金を蓄え、2棟目以降で新築を
脱サラを目指すなら1棟物件の購入がお勧め。資金が十分にあるなら土地を購入し物件を新たに建てる新築が有利です。新築のメリットは自分でプランニングできること。競合物件にはない魅力を作り出せれば、相場より家賃が高くても部屋が埋まる確率が高まります。しかも、中古物件は多くの金融機関では1~2割の自己資金を求められますが、新築はフルローンが可能なことも。しかし、着工から竣工、入居付けまで数カ月~1年間の資金繰りができることが大前提。1棟目として考えるなら、すぐに家賃収入を得られる中古物件が妥当です。その経験と資金力を生かして2棟目以降で新築というのが順当でしょう。
■東京か? 地方か?
全国どこでも可能性アリ。マクロで見ず、物件ごとに精査すること
全国どこでも良い物件があったら買うべきです。なぜなら、投資用不動産には東京も地方も関係ないからです。マクロの視点から見ると、日本の不動産事業は、地震リスクがあり、人口が減る一方で、空室が800万件を超えていて斜陽一途のはず。しかし、実際は右肩上がりにあります。さらに、個々の物件を見れば、地方でも常に満室の物件もあれば、人気の高い東京でも空室が続く物件もあります。不動産投資は、周りの競合物件に勝って満室にできればOK。立地は大切ですが、一概に東京がいいとは言えず、価値の高い物件を所有することが大切です。ニッチなマーケティングと心得、エリアは絞らずに探しましょう。
良い物件に出合い、自分の時間や手間をかけない賃貸運営をするためには良い業者選びが不可欠。どのように選ぶべきなのだろうか。
■どう見つける?
大家の口コミで評判のいい管理会社はイチオシ
管理会社選びのポイントは賃貸付け力。「場所が良ければ入る」「家賃を下げたら入る」などとすぐ“言い訳” が出てくる管理会社はダメ。入居者を獲得するための具体的な提案をしてくれる会社を選びたいところです。また、本業を持つサラリーマン大家であることを理解して、大家に代わってきっちりと管理してくれることも大切です。実際のところ、賃貸付けから維持管理まできっちりできる管理会社は少なく、何よりつきあってみないとわからないものです。そんなとき参考になるのは大家同士のネットワーク。今はSNSなどで大家のコミュニティが形成されているので、口コミで評判の良い会社に目星をつけるといいでしょう。
大きなお金を動かす不動産投資には不安がつきもの。そんな不安を解消するためには何をすればいいのか。
■失敗しないコツは?
自分と条件が近い人を探しシミュレーションしてみる
失敗しないコツは、「判断を人任せにしないこと」です。不動産投資は、それぞれの属性や投資物件などでケースバイケース。いろいろな人の話を参考にして、自分の場合はどうかと考えることが大切です。そのためには、実際に不動産投資をしている人の話を聞くことです。大家のコミュニティなどに参加して、属性などが自分と近い条件で成功している人を見つけ、自分に置き換えてシミュレーションしてみてください。実際に、同じ立場の人たちが集まるコミュニティから得られる情報はとても有益です。同時に、インターネットや地元不動産会社などから自分でリサーチすることも重要。自分が「良い」と思うことが第一です。
《取材・構成:麻生泰子》
《『THE21』2016年9月号より》
更新:11月22日 00:05