2016年09月09日 公開
2023年05月16日 更新
では、購入にあたり、どう物件を見極めればいいのでしょう。
物件価格の値上がり傾向は戸建てよりマンションに顕著です。さらに最近は、東京23区のマンションのみならず、郊外の中核駅の駅前物件にも飛び火しています。たとえば、武蔵小杉、浦和、府中、立川、柏などでも駅前立地のマンションは、23区の通常立地のマンションとさほど変わらない価格帯に。
こうした状況から、価格を抑えるために首都圏で増えているのは、いわゆる圧縮型の間取り。60~65平米の床面積に3LDKを詰め込む、小造りな間取りの物件が増えています。
さらに、好立地であれば土地も希少なため、利便性の高い新築マンションは価格も強気です。
その一方で、割安感が出てきているのは新築戸建てです。鉄筋を使わない戸建ては、建築コストの値上がりの影響をさほど受けていないので、一等地以外はマンションより戸建てのほうが安いという逆転現象も。中核駅の隣り駅など利便性が少々落ちるだけで価格はぐんと下がります。
建物については二極化が進行中。低価格の住宅を供給するパワービルダー系と、耐震性能や断熱性能を強化した住宅や太陽光発電により電力がプラスマイナスゼロになるZEH(ゼッチ:ゼロエネルギーハウス)などのプレミアム住宅系にニーズが分かれています。先々のランニング・メンテナンスコストを考えるならば、初期は高くても優れた省エネルギー性能を持つ住宅はアリだと思います。
中古戸建てについては、これまで建物の性能や耐震設計などを査定する基準が不明確でした。しかし、2018年から中古住宅のインスペクション(住宅の検査)の告知が義務化されるなど、消費者が安心して買える制度整備が進められています。
日本人の多くが新築志向の中、絶対中古がいいと答える検討者が、ここ2年で全体の5%から10%程度に増えており、弊社が運営する不動産・住宅サイト「SUUMO」でも、中古戸建ての検索に「耐震性/住宅ローン控除/内外装の保証」などの新項目を加え、状態のいい中古戸建てを探せるシステムを導入しました。
今後、空家問題が深刻化していく現実を踏まえ、中古戸建ての市場拡大が国の政策として進められていく予定です。今のところ、築20年を超える中古戸建て(木造)は住宅ローン控除の対象外とはなりますが、整備途上にあるからこそ、割安物件を狙えるチャンスと言えるでしょう。
住宅の価格はさまざまな要素から複合的に決められますが、一番大きく影響するのは「エリア」でしょう。弊社でも毎年、「住みたい街ランキング」調査を実施していますが、ベスト10常連の街は利便性が高く、街並みが洗練されており、高値を維持しています。
一方で、目を向けてほしいのが「穴場だと思う街ランキング」。近年、頭角を現わしてきた1、2位の北千住、赤羽は下町の雑駁なイメージですが、都心へのアクセスが良く、地価や物価は比較的安く“住みやすい街”として浮上してきています。
間取りや設備などのハードの部分も大切ですが、街のインフラや保育、教育事情、自分と似たような人が多いかなどのソフトの部分が意外に住み心地を左右します。
まず住みたい街を探して、そのうえで新築か中古かマンションか戸建てかを検討するほうが、後悔がない住宅選びができるのではないかと思います。
《取材・構成:麻生泰子》
《『THE21』2016年9月号より》
更新:11月22日 00:05