2016年09月27日 公開
2023年05月16日 更新
「保険は、滅多に起きないけれど、起きたら大変なことにかける」という原則に従うと、30~40代が検討すべき保険はせいぜい二つくらいです。
まず、貯蓄が少なく、自立していない子供がいる家庭の世帯主には、かけ捨ての死亡保険。終身保険ではなく、期間限定の「定期保険」「収入保障保険」を検討すること。人は必ず死にますから、終身保険は「確実に起こること」に備えることになり、保険料が高くなります。それに、老後になってから死亡する影響は、子育て期とは違うはずです。
もう一つは、「就業不能保険」「給与サポート保険」という、病気や怪我で長期間働けなくなったときの収入を補填する保険です。公的な制度である傷病手当金でも、会社員の場合、約1年半、標準報酬月額の3分の2に相当する額が支給されますが、その期間を超えると打ち切られます。そうした場合に助かる保険です。
1年半以上も働けなくなることは滅多に起きませんが、起きたら大変です。その大変な事態に、保険料の安い就業不能保険などで備えることは、検討に値するでしょう。
万が一のとき、どれくらいの保険金が必要かを考えるためには、まず国や勤務先の保障制度を知っておきましょう。
病気やケガで働けなくなったときには健康保険から傷病手当金が支給されますし、亡くなったときには厚生年金や国民年金から遺族年金が家族に支給されます。
また、会社によっては、福利厚生の一環として、独自の遺族年金制度や弔慰金、育英年金などを設けているところもあります。以前、私が相談に携わった例では、会社の保障制度が非常に充実していたため、民間の保険に加入する必要がなかった方もいらっしゃいました。
国や勤務先の保障制度で事足りるのであれば、それが一番です。「足りないぶんを民間の保険で補う。では、どれだけ足りないのか?」という発想でプランを立ててください。
「二人に一人ががんになる時代。だから、がん保険に入っておいたほうが安心です」といったセールストークに接すると不安になる人も多いかもしれません。
しかし、実のところ、がんは高齢者に多い病気です。たとえば、40歳男性が50歳までにがんにかかる確率は2%、60歳まで延ばしても7%です。また、「がん政策情報センター」などの調査によれば、がんにかかったときの費用負担は50万~100万円が多いようです。
したがって、基本的には老後まで貯蓄を増やすことに注力したほうがいいと考えます。複数のがん保険で試算したところ、保険料が給付金として加入者に還元される割合は50%にも届かず、加入者にとってかなり不利な仕組みだと思われるからです。
それでも、どうしてもがん保険に加入したい向きは、一生涯の保障がある終身タイプではなく、保障期間が限定されている定期タイプのがん保険を利用したらいいと思います。がんにかかりにくい年代であれば、安い保険料でそれなりに手厚い保障を持てるからです。
がん保険に限りませんが、皆さんには不安ではなく経済合理性を優先してほしいと思います。
次のページ
いつ、どんな病気になるかわからないから「医療保険」には入っておくべき?…… × >
更新:11月22日 00:05