2016年08月16日 公開
2023年01月30日 更新
「当社のブレストの目的は『課題解決』にあります。私が以前、在籍していたWEB広告事業の部署では、クライアントの抱える課題を解決するアイデア出しが、ブレストの主たるテーマでした。現在、在籍しているゲーム事業の部署では、どうしたらユーザーにもっと楽しんでもらえるかのブレストが多いですね。
ともあれ、どこの部署でも、課題を抱えている誰かが『ブレストお願い』と言えば、周囲がすぐに応じるのは共通です。『忙しいのに……』なんて迷惑顔をするようでは、カヤックの社員を名乗ってはいけません(笑)」
オフィス内には、ブレストに使いやすいコーナーが複数設けられている。中でもひときわ目を引くのが、机を何層にもうず高く積み上げた、通称「サル山」だ。頂上は平場になっており、低めのテーブルが置かれている。それを数人で囲めば、床上2mでブレストができる。見晴らし満点。いかにも良いアイデアの出そうな環境だ。「サル山のテーブルを見てもわかるとおり、ブレストは通常、4~6人の少人数で行ないます。それ以上多くなると、一人当たりの発言回数が減りますし、情報整理も難しくなりますから」と岩田氏。
瞬発力と密度の濃さを重視するがゆえに、時間もできるだけコンパクトに収めるそうだ。「『○時まで、30分間』などと決めて行なうこともありますが、多いのは『アイデアが10本出たら終了』というやり方です。こうして目標を設定すると、一種のゲーム感覚が生まれます。『早く10本達成しよう!』と、皆が燃えるのです。早い場合は7分、時間がかかっても、だいたい15分もあれば終わります」
10分前後で、本当に10本ものアイデアが出せるものなのか? 驚きを隠せない我々に、岩田氏は実際のブレストを実演して見せてくれた。
岩田氏がひと声かけると、たちどころに数人が集まる。今回はサル山ではなく、オフィスの一角に置かれた高めのテーブル(「棚」と言ったほうが適切だろうか)を立って囲み、さっそくブレスト開始。その場で決めたブレストのテーマは「挙げてみたい結婚式」だ。
開始後1秒で、「自分の部屋でやる結婚式って面白くないですか?」と、いきなりエッジの立ったアイデアが飛び出した。「いいね! 庭でもやってみたい」と、すかさず合いの手が入る。
ファシリテーター役の岩田氏も忙しい。全員から発言を引き出しつつ、さかんに質問を挟む。「直近で経験したのは誰?」「海外挙式って今、どうなんだろう?」「ちなみに、お葬式だったらどんなのにしたい?」と、新たな視点を次々に提供していく。
それに誰かが答えるたびに、周りから「それいいね!」と声が飛ぶ。10本のアイデアが出るまで10分も要さないことは、すぐに理解できた。
このように、カヤックのブレストは「一般的なブレスト」とはひと味違う。リラックスした雰囲気で行なう意見交換、という基本は同じだが、そのスピードが通常の倍はあるだろう。
これを可能にしている理由の一つに、メンバーが「手ぶら」で集まる、ということがある。
「パソコンも、資料も、筆記用具もナシでOK。メモも取らなくていい。もちろん、持ち込みたい人は持ち込んでもかまいませんが。テーマについての予備知識も不要です。だから、何の用意もせずにすぐ集まれますし、頭に浮かんだことを話すことだけに集中できます」
ファシリテーター役も、アイデアの「球数」を増やすことだけに集中しているという。
「メンバーから多くのアイデアを集めること。それも、できるだけ多様なアイデアを引き出すことが大事です。発想の幅は広いほど良いので、脱線も大歓迎。ファシリテーター役を務めるときは、目先を変える質問を数多く投げかけ、『横に広げる』ことを心がけています」
こうして出たアイデアは、案件を取りまとめるディレクターに引き渡されて、検討される。
「この段階からは資料も用意し、ホワイトボードなどを使ってきちんと話しあう会議をします。ブレストが『拡散』なら、会議は具体性をじっくり吟味する『深掘り』と言えるでしょう」
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更新:11月22日 00:05