2016年07月25日 公開
2016年07月27日 更新
東京・自由が丘の駅前に、行列の絶えない店がある。「BAKE CHEESE TART」は、焼きたてチーズタルトの専門店。全面ガラス張りの外観からは、カウンター前のオーブンから次々に焼き上がるチーズタルトが見える。サクサクのタルト生地と、とろりとして濃厚なチーズムースとのコラボレーションは、まさにやみつきになる味。そんな人気店BAKE CHEESE TARTを運営する〔株〕BAKEの経営者は、パティシエ経験を持たない長沼真太郎氏。オーナーシェフの多い製菓業界の中で、“お菓子のスタートアップカンパニー”として新しい風を吹かせたいという長沼氏にお話をうかがった。
――大人気のチーズタルトですが、この焼きたてチーズタルトはどのように生まれたのですか?
長沼 焼きたてチーズタルトは、実家の洋菓子店「きのとや」の新千歳空港店で店長をしていたときに偶然生まれたものです。当時、新千歳空港店は売上げが一番悪い店舗で、その立て直しが課題だったのですが、なかなかうまくいかない。焼きたてチーズタルトの原型である「冷蔵チーズタルト(ブルーベリー)」も販売数を伸ばせないでいました。
そんなとき、シンガポールで催事があり、焼きたてのチーズタルトを販売することになりました。焼き上がったものを箱に詰めて販売していたのですが、最初は苦戦しました。しかし、途中で箱がなくなり、仕方なく鉄板のままチーズタルトを並べて販売すると、たちまち行列ができたんです。“焼きたて”であることがひと目でわかるようになったのでしょう。
このやり方にピンときた僕は、帰国後、店舗の改装をし、オーブンで焼き上げたチーズタルトを鉄板のままレジ横に陳列し、目の前で箱に詰めるようにしました。すると、たちまち話題になり、1日1,000個も売り上げるまでになりました。その後、チーズタルトの改良を重ね、現在のかたちになり、札幌に焼きたてチーズタルトだけの専門店もオープンさせました。
――その後、独立されるきっかけはなんだったのでしょう?
長沼 焼きたてチーズタルトは北海道で成功を収めたのですが、ちょうどその頃、大学時代からの友人が、Eコマースの運営で大成功しているという話を聞きました。昔から「将来はお菓子屋をやりたい」と思っていましたが、同時に、いつかゼロから事業をやりたいと思っていた僕は、ITの可能性に確信を得て、自分の強みである“お菓子”とITを組み合わせて何かできないかと思案しました。そして生まれたのが、デコレーションケーキをオンライン販売する「Click on Cake」というサービスです。きのとやの社内に「Click on Cake」専門の会社を立ち上げ、運営を始めました。
実家の「きのとや」は、札幌市内を中心に8店舗ある地域密着型のお店で、電話などで注文いただいた作りたてのケーキを市内中心に配送する宅配ケーキのサービスを33年前からしていました。より多くの人に北海道のお菓子の美味しさを伝えたいという思いもあり、このノウハウを使って、WEBサイトを利用した全国展開を考えたんです。
しかし、サービス開始当初からクレームの連続。配送途中に多くのケーキが崩れてしまうのでした。それでも、Eコマースの可能性を捨てきれず、今度はオンラインでチョコレートをカスタマイズできるサービスを始める準備をしました。
そんな中、東京でスタートアップビジネスを展開している友人たちを見ていて、北海道にいてはスタートアップのスピード感についていけないと痛切に感じ、東京で独立したいという思いがどんどん強くなっていったんです。そして、裏原宿に家賃14万のオフィス兼住居を借り、〔株〕BAKEを立ち上げました。2013年のことです。
更新:10月14日 00:05