2016年07月25日 公開
2016年07月27日 更新
――拠点を東京に移したことで何か変わりましたか?
長沼 最新の情報や人脈が得られたことは大きかったですが、何よりも大きかったことは、マックという21歳のアメリカ人エンジニアとの出会いです。
当社を立ち上げ、最初のうちは“原宿発・チョコレートのスタートアップカンパニー”というキャッチコピーを掲げて、お菓子のスタートアップを始めようと思っていました。しかし、「いざ発表」という前日に、知り合いのコンサルタントの方から「やっていることがぶれている」という指摘を受けたんです。
Click on Cakeで収益が取れていない状況で新しいサービスを展開してもダメだと反省し、結局チョコレートのカスタマイズサービスは中止してClick on Cakeに集中することにしました。とはいえ、Click on Cakeは不調のまま。資金もどんどん減っていく中で、原宿のオフィスの1室を、Airbnbを利用してバックパッカーに貸し出すことにしました。そこに泊まりにきたのがマックでした。
――そこから大きく変わっていくんですね?
長沼 はい。マックとの出会いが1つ目のターニングポイントでした。
その頃、“Eコマースでケーキを販売する”という軸をぶらさずに、新しい展開ができないかを模索しており、その中で「写真ケーキ」という商品に辿りつきました。ケーキに写真をプリントするサービスを行なっているケーキ屋はあったのですが、ほとんどがパティシエとメールでやり取りをするようなやり方でシステム化されていなかった。
これをもっと簡略化できないかと思っていたときに、マックに打診すると「1週間でできるよ」と。スマホで撮った写真をアップロード・加工して、そのまま注文できるiPhoneアプリを作ってくれたのです。これが「PICTCAKE」(ピクトケーキ)というサービス。これで潮目が大きく変わりました。
ケーキに写真をプリントした「PICTCAKE」
PICTCAKEは、その手軽さが話題を呼び、今では年間約5万件のオーダーを受注するまでになりました。ずっと思い続けていた“お菓子のスタートアップ”が成功した瞬間でした。その後、ビザの関係で、残念ながらマックと日本で仕事はできていませんが、今でもリモートで我々のサービスを手伝ってくれています。
――リアル店舗であるBAKE CHEESE TARTでもターニングポイントはあったのでしょうか?
長沼 BAKE CHEESE TARTのターニングポイントは、自由が丘にお店を出したことです。2014年2月に新宿ルミネエストに最初の店を出し、次に自由が丘の駅前にビル1棟を借りて出店しました。本来、BAKE CHEESE TARTのような1商品を販売する店舗は小さくてもよいのですが、このときは通常の6倍の投資をしました。新宿のお店はそこまでうまくいっていたわけではないので、ある意味大ばくちです。でも、“スイーツの聖地”である自由が丘でうまくブランディングが築ければ、BAKE CHEESE TARTは成功すると思った。結果、これがうまくいきました。
――2年経った今でも行列ができていますね。海外の方も並んでいるようですね。
長沼 SNSなどでBAKE CHEESE TARTのことを知って来てくださる方も多いようです。おかげで、海外での認知度も上がり、シンガポールにオープンしたときは4時間待ちの行列ができたようです。
スイーツの聖地・自由が丘に建つ「BAKE CHEESE TART」
――海外ではどのような展開をしていく予定ですか?
長沼 現在、当社のリアル店舗は、焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」と、シュークリーム専門店「クロッカンシュー ザクザク」、焼きたてアップルパイ専門店「RINGO」の3ブランドで、国内外合わせ27店舗あります。そのうち海外は、BAKE CHEESE TARTの12店舗。韓国、香港、タイ、シンガポール、台湾に出店していて、6月末には上海店がオープンしました。
今後は1年に1ブランドずつ増やし、6~7年後には、国内・海外で合計1,000店舗を目指しています。今後は、アメリカやヨーロッパへも進出を考えています。
更新:11月24日 00:05