2016年07月22日 公開
2022年12月08日 更新
難解な経営戦略論が、その流れや背景・人物像とともに学ぶことで頭に入ると評判を呼んだ『経営戦略全史』が、今回『マンガ経営戦略全史』として発刊された。著者である三谷氏に本書の魅力を語っていただくとともに、経営戦略史を学ぶにあたって「これだけは必ず押さえておきたい人物」についてうかがった(前編・確立篇はこちら)。
インタビュー前半では「経営戦略を確立した人々」について聞いたが、今回は「経営戦略を革新させた4人」を紹介してもらう。21世紀、つまり今を代表する経営戦略学者とは?
「革新篇」でまず知っておいていただきたいのは、ミンツバーグです。ポジショニング重視かケイパビリティ重視かは「場合による」と主張し、企業の発展段階などに応じて二つをきちんと統合することを説きました。
あのポーターを「ビジネス全体のことを理解していない経済学者」と公然と批判し、一度は否定された「経営はアート」という考えを再び持ち出すなど、時代に流されない姿勢が非常にカッコいい。マンガ版ではなんと、羽織袴の噺家として描かれています(笑)。
その5
ヘンリー・ミンツバーグ(1939 - )
MITでマネジメント博士号を取得後、カナダのマギル大学で教鞭を執る。ポジショニング派とケイパビリティ派の争いに「そんなものに答えはない。場合によって答えは変わる」と主張。たとえば発展期にはポジショニング重視、安定期にはケイパビリティを重視して組織を強化……といった具合だ。これを「コンフィギュレーション」と呼んだ(ちなみにこの「どっちも大事」という説は、かのアンゾフがすでに『戦略経営論』にて出している答えでもある)。 実務を重視し、企業でもっとも大事なのはリーダーではなくマネジャーたちだとも説く。
また、白人男性ばかりが登場していた「確立篇」と違い「革新篇」では、アジア系やインド系、女性など多様な人々が登場します。『リバース・イノベーション』のゴビンダラジャンや、「グラミン銀行」のユヌスなどですが、中でもよく知られているのが、日本でもベストセラーとなった『ブルー・オーシャン戦略』のキムとモボルニュでしょう。強豪がひしめく「レッド・オーシャン」ではなく、敵のいない新しい市場「ブルー・オーシャン」を作り出すべき、と説いた同書は、世界中でベストセラーとなりました。
二人ともフランスに本拠を持つINSEAD(インシアッド)の教授で、キムは韓国出身の男性、モボルニュはアメリカ出身の女性です。
ブルー・オーシャン戦略の特徴の一つが「欧州発」であること。実は私も出身者なのでよくわかるのですが、INSEADでは「多様性」に大いにこだわっています。たとえば、最初の学校指定のチームは、あえて学生たちの衝突が最も多くなるように作ってあります。でも、そういう経験によって世界は平ら(フラット)ではなく多様(ギザギザ)だということを、身をもって体験できるのです。
その6、その7
チャン・キム(1952 - )
レネ・モボルニュ(1963 - )
韓国生まれのキムと、アメリカ生まれのモボルニュ。元々ミシガン大学の教授だった二人は、よりよい研究の場を求めて仏INSEADに移籍。2004年に発表した『ブルー・オーシャン戦略』で一躍有名になる。競合がひしめく「レッド・オーシャン」ではなく、競争のない「ブルー・オーシャン」を目指すべき、という指摘は、「戦略とは競争に勝つことだ」というポーターの主張と真っ向から相反するものだった。二人は世界の経営思想家ベスト50を選出する「thinkers50」の上位に連続してランクインを果たしている。
更新:11月23日 00:05