2016年07月15日 公開
2023年05月16日 更新
とはいえ、ただラジオを聴いているだけでは、ここぞというときにその表現が自然に口から出てくるまでにはなりません。
私は、語学習得の土台は「読む」「書く」の力だと考えています。読んで理解できない表現は聴いてもわからないし、書けないことは話せないからです。そこで、「ラジオ講座で覚えた表現を、自分だったら仕事の場面でどう使うか」を考え、作文することをお勧めします。そして、その文章を何度も音読するのです。
こうしてラジオ講座で覚えたことをベースに、「読む」「書く」の力を鍛え、さらに「自分ならどう言うか」を考える練習を積むことで、英語の運用能力は格段にアップします。
ラジオ講座で基本的な表現は学べますが、実際の仕事では、業界の専門用語やその職種ならではの単語も必要でしょう。そうした表現を学ぶのに最適なのは、自社や同業他社の英語版アニュアルレポートを読むこと。あるいは英字新聞や英語のニュースから、自分の仕事に役立つ言葉を書き出してみるのも役立ちます。
こうして自分の仕事に必要な情報はプラスαの学習で補いつつ、それをラジオ講座で覚えた表現と組み合わせて、アウトプットする習慣をつけてください。その蓄積が増えるほど、実際のビジネスの場で使える英語力が高まります。
話す力を伸ばすには、ラジオ講座を聴くときにシャドウイングをするとより効果的です。お手本に少し遅れてかぶせるように話すことで、ネイティブが話す英語のリズムやイントネーションに近づきます。
また、文法については、一からやり直す必要はありません。ラジオ講座で生きた英語を学びながら、もし文法的な疑問が出てきたら、その都度調べて解決するほうが理解しやすいでしょう。
ラジオ講座の講師として私が目指しているのは、リスナーに「世界のどこでも通用する英語とコミュニケーションスキル」を身につけてもらうこと。そして世界標準の英語を使えるようになるには、実は平易な言い回しさえ覚えれば十分なのです。
国際会議やグローバルなビジネスの場においても、難しい表現や格好いい言い回しを使えるからといって、周囲に一目置かれることはありません。むしろ、誰にでもわかるシンプルな英語で自分の意思を伝えられる人のほうが、「あの人は仕事ができる」と思われます。
そもそも、英語を使うのはネイティブだけではありません。約20億人といわれる世界の英語人口のうち、英語圏の国々の人口は4億人強にすぎません。最近は、グローバルで活躍するネイティブの間で「ノンネイティブにも理解できるやさしい英語を使うこと」が推奨されています。
イギリスで発刊されているネイティブ向けの「plain English(わかりやすい英語)」のガイドラインをまとめた解説書でも、たとえば「verify」ではなく「check」、「initiate」ではなく「begin」を使いなさい、といったことが書かれています。今や「ネイティブの英語がノンネイティブに伝わらなければ、それはネイティブの責任である」というのが、国際社会のスタンダードになりつつあるほどです。
NHKラジオ講座で英語の基礎力を身につければ、外国人と堂々とわたり合えます。みなさんも自信を持って、楽しく英語学習を続けてください。
《取材・構成:塚田有香≫
《『THE21』2016年7月号より≫
更新:11月22日 00:05