2016年04月26日 公開
同様に、学生に強い印象を残すのが、三菱グループの創業者である岩崎弥太郎氏だという。
「若い頃は倒幕運動にも関わり、明治維新後、実業家として活動を開始したのは30代後半になってから。そして50歳で亡くなるまでのほんのわずかな時間で三菱財閥の基礎を築き上げた彼の人生は、『起業は何歳からでも遅くない』ことを教えてくれます。人気教材である『岩崎弥太郎:三菱の創業』を執筆したジェフリー・ジョーンズ教授は『岩崎弥太郎は今の時代の若者にとってのロールモデル』とまで言っています。
一方で教材には、彼が『長崎の花街で藩のお金を芸者のために使い込んだ話』や『花柳界での盛大な接待により、政財界との関係を深めた話』などが紹介されており、そんな破天荒さも人気の理由のようです。
欧米の経営者は、自分自身のいわゆる『破天荒なエピソード』をあまり語りたがりません。飾らない日本人経営者の姿勢も、好感を生んでいるのでしょう」
「日本企業は保守的で、変革が難しい」という認識は、ハーバードも同様。それだけに、大きな変革やグローバル化を推し進めた経営者は注目される傾向にあるという。
「日本の現役経営者が授業で取り上げられることもありますが、中でも圧倒的に注目を集めているのは、楽天の三木谷浩史社長です。最も評価されているのは三木谷氏が、保守的な日本で『英語化』という大改革をやり遂げた『社内英語化』を断行したことです。セダール・ニーリー准教授の書いた『言語とグローバル:楽天と「英語化」』のケースは、必修科目に選ばれているだけでなく、世界中の他の経営大学院でも使用されるほどです。このケースは、ハーバードの非英語圏出身者の共感を得ているのはもちろん、ネイティブが『こういう悩みがあるのか』と留学生の気持ちを思いやる良いきっかけにもなるようです。
他にも、日産のカルロス・ゴーン氏や武田薬品工業の長谷川閑史氏など、変革の難しい日本企業を大きく変えた経営者が評価されるようです」
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ハーバードのエリートたちが「新幹線のお掃除」に驚愕する理由 >
更新:11月13日 00:05