2016年02月10日 公開
2023年05月16日 更新
今年1月の発売と同時に即、増刷が決定するなど、大きな話題になっている本がある。それが『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(佐藤智恵著)だ。本書のために20人以上の教授へのインタビューを敢行した佐藤氏が、取材の中で痛感したこと、それは「日本人は、自分たちの本当のすごさを知らなさすぎるのではないか」ということ。
それはいったいどういうことか。そして、世界のビジネススクールの頂点たるハーバードにおいて、「日本人と日本企業」はどのように教えられているのか。お話を伺った。
――自らも米ビジネススクール出身で、MBAについての著書も多い佐藤さん。なぜ今回、このテーマで書籍を書こうと考えたのでしょうか。
「『日本への注目が高まっている』――リーダーシップについての取材でハーバードの教授陣へのインタビューをしていたとき、そう感じたのがきっかけです。取材の中で『日本企業を題材にしたケースが人気を集めている』『今度、この日本の企業のケースを書こうと思っている』といった話が何度も出てくるのです。
ご存じのとおり、アメリカのビジネススクールの授業は『ケース』と呼ばれる事例をもとに、ディスカッション形式で進められるのが一般的です。その中で、日本企業を扱ったケースがとりわけ人気を集めており、新たなケースも続々と執筆されている、というのです。
同じころ、日本人留学生からある話を聞きました。それは『今、ハーバードで一番人気があるのは日本』だということ。ハーバードに限らずアメリカのビジネススクールでは世界各国への研修旅行が組まれることが多いのですが、その一番人気の行き先が日本で、100名の枠がすぐに埋まってしまう、というのです」
――佐藤さんが留学されていた当時よりも人気が高まっている、ということでしょうか。
「私が米コロンビア大学経営大学院に留学していたのは2000年から2001年。当時も、日本への研修旅行はそこそこ人気がありましたし、日本のことを扱ったケースもないわけではありませんでした。でも、ここまでの人気ではなかったと記憶しています。
なぜ今、日本に注目が集まっているのか。それをぜひ解き明かしたいと考えたのです」
――「ハーバードのケースとして取り上げられた」というと、それだけでかなりすごいことのように思います。
「いえ、実はそうとは言い切れないのです。実際には毎年膨大な量のケースが執筆されており、そのうち授業でずっと使われるのはごく一部。重要なのはあくまで『どれだけ使われているか』です。
そんな中、トヨタやホンダを扱ったケースはロングセラーとして何十年も教えられ続けており、最近ではそれに加えて『日本航空』や『全日空』、意外なところでは『楽天』を扱ったケースの人気が急上昇している、というのです。とくに楽天の『英語公用語化』のケースは、日本企業関連の事例では近年最大のヒットと言われるほどです」
――注目を集めているのは、やはりこうした大企業中心なのでしょうか。
「実は、日本でも知る人ぞ知るといった企業にも注目が集まっています。たとえば、ロボティクスで注目を集めるサイバーダインや、健康系ベンチャーのキャンサースキャン、旅行に特化したサイト運営を手掛けるベンチャーリパブリックなど。
日本はアメリカに比べるとベンチャーが育たない、と思っている方は多いと思いますが、ハーバードの見方は逆。ニティン・ノーリア学長自ら『日本では、世界を席巻しそうな企業が密かに生まれつつある』と言っているほどです」
更新:11月22日 00:05