2016年06月20日 公開
2016年07月29日 更新
走ることをやめず、ストレスは反骨心ひとつで「ねじ伏せる」。そんな阿部さんの目には、下の世代は「ヤワ」に映ることも多いという。
「物事を無難に収めようとする人が多いですね。番組後の反省会を終えた若いスタッフがよく、『とくに問題ありませんでした』と報告してくるのですが、それこそ問題です。10人が10人、そこそこ賛同する番組なんてつまらない。批判的な意見もある中、何人かが熱烈に支持するような番組こそが面白いはずです。だから僕は『問題ナシで良しとするな!』と言うのですが、『阿部さんにはついていけません』なんて言われてしまう。
彼らは衝突するのが嫌なのでしょう。でも、意見の食い違いや感情のぶつけ合いがあってこそ生まれるものもある。ストレスを避けてばかりいたら、その先には行けませんよ」
今は世の中全体が、ストレスを避け過ぎる傾向にある、と阿部さんは指摘する。
「自分が傷つかないこと、人を傷つけないことばかり気にして、表立っては何も言わない。一見優しいように見えますが、憂うべき時代だと思います。
そうしたコミュニケーションの中では、メンタルは弱くなります。褒められれば舞い上がり、叱られれば過剰に傷つく人がどんどん増えていくのです。
つまりは皆、人の目ばかり気にしているのです。自分の評判に一喜一憂し、見た目を整えようとし、形から入ろうとする。やたらオシャレで小綺麗だけれど、中身が伴っていない人が増えている気がします」
阿部さんの価値観はその正反対だ。叱られることをいとわず、外見よりも中身を重視する。
「僕は叱られると嬉しい、と感じます。問題点に気づかせてもらえないと、向上できませんから。若い人にも遠慮なく指摘してくれ、と頼んでいます。
一方で外見には無頓着で、スタジオ入りの際のメイクもしません。見た目より、取材内容に注目してほしいからです。これはどんな仕事でも同じでしょう。大事なのは自分がどう見られるかより、どんな成果を提供するか、ということなのです」
こうして仕事の中身に注力することが、「どう見られるか」から生まれる不安やストレスを振り切る力となる、と阿部さん。
「それには大前提として、仕事にやりがいを持ち、意義を感じていなくてはなりません。『この会社ならカッコよさそう』といったブランド志向だけで就職した人は、後々苦しい思いをするでしょう。
それでも軌道修正は可能です。今いるところで必死にやりがいを探すか、見つからなければ転職してでも、自分のしたい仕事のできる場所に向かうことです。その場所でなら、ストレスを『避ける』のではなく、ストレスを『超える』モチベーションを持てるでしょう」
自身もそうしてキャリアを形成してきた。ここまでの道のりに、まったく悔いはないと語る。
「僕は、仮に明日が来ないとしても後悔しないくらいの気持ちで仕事をして、日々全力を尽くしています。その毎日が、結果として明日へ前進する力の源になっています」
<『THE21』2016年6月号より>
更新:11月22日 00:05