2016年03月09日 公開
2023年01月18日 更新
1年間の濃い冒険を経て帰国したルー氏。「あの日々はブラッドアンドミートになっています」とルー語で振り返る。10代で経験した英会話の世界は、どのようにして「ルー語の世界」へと実を結んだのだろうか。
「芸能活動をする上で、英語交じりで話すキャラは面白い、という感覚はありました。ほかにそうした芸風の人はいませんでしたし、簡単な英語ですから通じない心配もない。そういうわけでなんとなく話していたのですが、本格化したのは50代を過ぎてから。10年前から仕事をトゥギャザーしているマネージャーが、もっと積極的に強調しよう、と提案してくれたのです」
以降、「藪からスティック」など、現在誰もが知るルー語が次々に生まれた。日々の会話に意識的に英単語を取り入れるようになり、60歳を超えた今でも、語彙はさらに増えているという。
「『エクスペリエンス』など、めったに使わなかった単語がなじみ深いものに。普段話している言葉をピンポイントで英語に変えていくのは楽しいですね。塵も積もればマウンテンで、オールウェイズ使えばいざというときにパッと出てくる。机にかじりついて単語を覚えるのが辛い、という方にはとてもお勧めです」
ルー語は単語レベルの変換であり、文法や構文とは無縁なのも気楽なところだ。
「正確なグラマーで話そうと思うと言葉が出てこず、それが壁になりがちです。でも単語を変えるだけなら簡単。しかも、これでめっぽう通じる。とくに日本で暮らしていてある程度日本語のわかる外国人なら、パーフェクトに理解してくれます」
近年は街で外国人の姿を見かけることも多くなり、コミュニケーションのチャンスはさらに広がっている、とルー氏。
「日本に住む人や旅する人と、大いにトークすればいい。でも、日本人だけが頑張って英語を話す必要もない。あちらが片言の日本語で、こちらも部分的な英語で、お互い歩み寄ればわかりあえます。英会話ならぬ、ルー会話もいいかもしれません(笑)」
良くないのは、上手に話せないからという理由で身構えてしまうことだと語る。
「問題は上手下手ではなく、そうした心の壁です。オリンピックイヤーも近づき、これからはさらに多くの外国人がやってくる。そのときはぜひ、日本人特有の引っ込み思案は捨ててほしい。下手でも堂々と話すこと、物おじせずオープンになること。それが言葉の技術よりもずっと大事な、インターナショナルなマインドなのだと思います」
取材・構成 林加愛 写真撮影 永井浩
『THE21』2016年2月号
更新:11月25日 00:05