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英語習得の近道は「脳に英語を流し続ける」こと

2016年02月15日 公開
2023年05月16日 更新

加藤俊徳(脳内科医/医学博士)

 

楽しめばこそ自然と頭に英語が浮かぶ

 それでは、どうすれば脳の中に英語を流し続けられるのか。

 1つは、英語が必要な状況に身を置くことです。
 たとえば、英語圏で暮らせば、四六時中、英語に触れることになり、英語ができるようになるでしょう。私も6年間の米国赴任中に英語力がかなり向上しました。

 しかし、それでは日本にいながらにして英語を身につけることはできないのかというと、まったくそんなことはありません。米国赴任前の日本にいるときでも、英語の点数が低いために大学受験で2浪もしていた私が、英語で学術論文を書けるレベルになっていました。それはなぜかというと、研究のために、英語の論文を読まざるを得ず、英語での学会発表を聞かざるを得なかったからです。私が扱っていたMRIの最新情報は、当時は日本語の文献がほとんどありませんでしたから、MRIの研究のことを考えると、頭の中に英語が浮かんでこざるを得なかったわけです。

 仕事で英語を使っている人は、当時の私と同様の状況にあるはずです。それにもかかわらず、なかなか脳番地をつなぐネットワークが強化されないとすれば、英語に触れるのがつらい、面白くないと感じているからだと思います。

 つらい、面白くないと感じると、脳の働きが悪くなります。逆に言えば、脳がよく働いていれば、つらい、面白くないとは感じません。
 ですから、英語力を効率良く高めるためには、楽しみながら英語に触れることが重要だと言えます。

 楽しむためには、好きなことを入り口にするのがいいでしょう。好きなことなら、意識すらしなくても、自然とそのことを考えます。たとえば、ビートルズが好きな人なら、気がつけば頭の中でビートルズの曲が流れているでしょう。すると、脳の中を英語が流れる頻度が高くなるわけです。

 洋画が好きなら、洋画を繰り返し観て勉強するといいでしょう。映画の良いところは、あるシーンの状況や俳優の表情、声のトーンなどとともに英語に触れられることです。すると、音声だけよりも記憶に定着しやすいし、音声に聴き取れないところがあっても、理解系脳番地を働かせて、何を言っているのかを推測することができます。相手が言っていることを推測しながら聴くというのは、リスニング力を鍛えるためにとても効果的な方法です。

 ちなみに、男性の場合は、女性とは逆で、聴覚よりも視覚が優位な人が多いので、映像を使った勉強がより効果的です。

 

得意なことから始めてあとで苦手を克服しよう

 まずは、苦手なことではなく、得意なことから始めるのも、楽しむためのポイントです。人によって、リスニングが得意な人もいれば、リーディングが得意な人もいますから、自分はどちらが得意なのかを知って、得意なほうから手をつけましょう。そのほうが、成果が出やすく、自信もつきます。1つの能力が伸びれば、他の能力の向上にも良い影響を与えます。

「単語を覚えるのがつらい」という場合は、自分で文章を作ってみてはいかがでしょうか。単語帳とにらめっこをして、使わない単語を覚えようとするからつらいのです。伝えたいことを伝えるのに必要な単語なら、それほどつらくはないでしょう。

 仕事で使えそうな文章や、趣味のことを外国人に伝えるための文章を書こうとすると、知らない単語や表現が出てくるはず。それを調べて、自分で使ってみると、記憶にも定着しやすくなります。

 英語に触れる頻度を高めて、常に脳の中を英語が流れるようにする。そのためであれば、具体的な方法は、どんなものでもかまいません。むしろ、1つの勉強法を絶対のものだと思わないほうがいい。さまざまな方法を、自分なりに工夫してみてください。

 

《取材・構成:林 加愛》
《『THE21』2016年2月号より》

著者紹介

加藤俊徳(かとう・としのり)

脳内科医、医学博士、 加藤プラチナクリニック院長

Toshinori Kato (株)「脳の学校」代表。 昭和大学客員教授。MRI脳画像診断・脳科学の専門家で、脳を機能別領域に分類した脳番地トレーニングや助詞強調音読法の提唱者。91年、脳活動計測「fNIRS法」を発見。95年から2001年まで米国ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI画像の研究に従事。発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、小児から高齢者まで1万人以上を診断・治療。『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)など著書多数。

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