2015年12月29日 公開
2023年05月16日 更新
それでも、ついカッとなってしまったとき──てきめんに効く特効薬は、怒りを行動に移す前に「6秒間待つ」ことです。怒りの感情は生じてから6秒までが最も強く、それを過ぎると少しずつ小さくなっていくと考えられています。その6秒間をやり過ごす方法をご紹介しましょう。
まず「怒りのレベル判定」を頭の中で行なってみます。今の怒りがどのレベルにあるか、下記(図2)の10段階で判定してみるのです。状況を客観的に見られるようになり、怒りをクールダウンできます。
怒りレベルが低めだったら「魔法の言葉」をかけてみましょう。たとえば、「明日になったら忘れているよ」「たいしたことじゃない」「怒るのも仕方ないよね」など。こうした気持ちがラクになる言葉を自分にかけると、言葉の効果で心が落ち着いてきます。
怒りが中レベルになると、冷静さを失い、ジワジワと怒りが膨らみます。それを止めるためには「思考停止」が有効。何も考えないのではなく、手元のペンや資料に意識を集中させたり、利き手と逆の手で作業をすることで、脳の怒りの居場所をなくすのです。
怒りが最高潮に達したときは「その場から離れる」。現場から物理的に離れることで、スイッチを切り替えるのです。外に出て身体を伸ばし深呼吸すると、リラックスして、心の力みも抜けます。その場から離れることができない場合、目をつぶって外の世界と自分を遮断し、深呼吸して何か楽しいことを考えてみましょう。
怒りっぽい性格に困っている方もいるのではないでしょうか。そんな怒り体質の改善には「自分の怒りのパターンを知る」ことが第一歩。お勧めなのは、怒りを記録する「アンガーログ」です。一つひとつを書き出していくと、自分の怒りのパターンが見えてきます。「話し方でイラッとくるらしい」「人に注意されるとカッとなる」「マイペースな人にイライラする」などと自分の怒りに客観的になれるので、衝動的な感情に振り回されなくなります。
そもそも、私たちの持つ価値観は、正解も不正解もないのです。自分にとっては「メールの返事は1日で返す」が正解でも、人によっては「3日ぐらいは大丈夫」が正解かもしれません。「あの人なりのものさし」を許容できれば、人生はずいぶんラクになります。
さらに、その許容を「共感」まで高められれば、つまらないことで怒って自他を疲弊させることはほとんどなくなります。
「あれだけ忙しい立場なら、メールの返事も大変だろうに」「部下に当たり散らすのは、部長も辛い立場だからだろう」などと相手の立場を理解できれば、怒りの感情は消えていきます。これは相手のためでなく、自分のためでもあるのです。
というのも、最新の神経科学では、日頃考えていることが、脳の神経回路に影響を与え、思考のパターンを決めていることが明らかになっています。日頃から怒りや恐怖などマイナスの感情に支配されている人は、何かが起きたときにマイナス面ばかり見る思考回路ができてしまうのです。
そう考えると、感情は自分の意思とは関係なく湧きあがるのではなく、自分が決めるもの。つまり、感情は理性によってコントロールすることができるのです。
感情のコントロールは訓練です。日頃から、アンガーログなどで自己を観照する習慣を身につけ、怒りにとらわれない生活を送りましょう。
(取材・構成:麻生泰子、『THE21』2015年10月号より)
更新:11月24日 00:05