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「イライラ」を抑える特効薬は「6秒待つ」?

2015年12月29日 公開
2023年05月16日 更新

安藤俊介(日本アンガーマネジメント協会代表理事)

衝動的な「怒り」をどうコントロールするか

最近、イラッとすることが多い──そんな悩みを持つ人がぜひ知っておきたいのが「アンガーマネジメント」。怒りの裏にある、自分を守りたいという感情のメカニズムを知り、どのように怒りにとらわれない心を手に入れるか。怒りの感情コントロール専門家、安藤氏にうかがった。

 

自分を守るために「怒り」は生まれる

怒りの源泉は、人間が持つ「自分の身を守る感情」。動物は敵が現われたとき、すぐさま相手に飛びかかったり、逃げ出したりできるよう、臨戦態勢に入ります。その際、アドレナリンという心身の興奮状態を作るホルモンが分泌されます。これが怒りの源です。

現代人は、敵に遭遇して生死の瀬戸際にさらされることはほとんどないものの、会社や取引先の人、電車や街で出くわす見ず知らずの他人や身近な家族によって、自分が守りたいテリトリーを脅かされたとき、同じように臨戦態勢に入ります。そのテリトリーとは、誰しも心の中にある、「こうあるべきという価値観(思い込み)」です。

たとえば、「約束の時間は厳守するべき」「もっと自分を評価するべき」「自分の言うことに従うべき」……。しかし、他人も自分の「~べき」を持っていますから、ときには裏切られることも。すると、自分の価値観や立場を否定されたように感じ、脅威を感じます。その恐怖から「怒り」が湧いてくるのです。

 

「怒りの線引き」とは?

人の心にある「~べき」の価値観は、下の図1のように三重になっています。

問題は2の、自分と「少し違うが許せる」許容ゾーン。ここは、その日の機嫌や相手によって変化します。機嫌の良い日は自分の意見を否定されても受け入れるが、悪い日はカチンとくる。あるいはAさんに意見を否定されても素直に聞くのに、Bさんに言われると頭にくる。怒りの基準が曖昧なので、よくよく考えれば怒るほどでもないのに感情が先走り、怒りをコントロールできなくなる。アンフェアな怒りは、人間関係や立場を悪くし、健康や自己イメージを損なわせます。

「アンガーマネジメント」は、自分の中でこの三重丸を描くことから始まります。そして、2の許容ゾーンを意図的に大きくしていくのです。際限なく広げればいいわけではありませんが、「他人が自分と意見が違うのは当たり前」と許容ゾーンを広げれば、自分の価値観に固執する必要もなくなり、日頃のイライラは減ります。また、2の範囲を理性的に一定に保ち、他人への怒りの基準をフェアにすることも重要です。

怒りはゼロにする必要はなく、むしろ必要な感情です。怒りを失った人間は危険察知や防衛本能すら失い、この世を生き抜くことが困難になります。実際、側頭葉を損傷し、怒りの感情をなくした人が、何が危険なのかわからなくなり、リハビリ中、怪我をし続けるという事例が報告されています。

3のNGゾーンが脅かされるならばきちんと怒り、2の許容ゾーンなら冷静に受け止める。アンガーマネジメントとは「怒りの線引きができるようになる」ことなのです。

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著者紹介

安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)

日本アンガーマネジメント協会代表理事

1971年生まれ。怒りの感情コントロール専門家。怒りの感情と上手に付き合う心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本における第一人者として研修や講演、メディア、執筆など幅広く活動。『この怒り 何とかして!!と思ったら読む本』(朝日新聞出版)など著書多数。

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