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松下幸之助から学んだ「心のひらきかた」とは?

2015年10月27日 公開
2022年10月05日 更新

ジェームス・スキナー(経営コンサルタント)

人、お金、能力は、自然と集まってくる

「心をひらく」ことについて、スキナー氏は、職場、家庭、身近なビジネスの成功例を取り上げながら、わかりやすく伝えた。

もし誰かと口論になり、自分がまちがっていたと感じたなら、すぐに謝ったほうがいい。感謝していることがあれば、それも伝える。なぜならそれが「素直」な選択であるからだ。

東京ディズニーランドが成功しているのはなぜか。子どもや家族が楽しめる場所を生み出したいという「共存共栄」の心があったからだ。それが正しい「道」であったから、相手の心をひらくことができ、必要なものが手に入った。千葉県が土地を貸してくれ、お金を貸してくれる銀行が現れ、高速道路の専用出口ができた。

「みなさんがお店を経営しているとして、店先に高速の出口ができたら、いまよりもビジネスがうまくいくと思わない? お金が足りないという現象は、この世で起こりえないことです。足りないと思っているのは、自分の名義しか見ていないから。自分名義の口座にはなくても、世界のどこかにはあります。心の連続体が、自分とそのお金を結びつけてくれるんです」

いくら優秀な人でも、1人で何かを成し遂げるのはむずかしい。人の力が必要だ。心をひらけば、その力を味方につけることができるのだ。

ちなみに新著ではこれ以外にも、さらに多くの視点や事例を加えて、松下幸之助の言葉やエピソードを紹介している。たとえば松下幸之助を側近で見てきた人たちの言葉を加え、心理学や物理学の視点から見るとどうなっているかを説明し、ノーベル賞作家の言葉や、古今東西の格言とどう重なるかを解説しているのだ。

 

お金がない中、100人の子供を旅行に連れていけた理由

スキナー氏も、心をひらくことにより、仕事と人生をよい方向に進めた1人である。その例の1つとして、彼は会社を設立して間もないころの話をした。

「施設の子どもたち100人をディズニーランドに連れて行こうと計画したんです。しかし、会社にお金はありません。スタッフにも、『預金通帳の残高を見ていますか? そんなお金ありませんよ』と言われました」

会場が笑う。頭の中でそろばんをはじき、どれくらいのお金が必要なのか計算した人も多かっただろう。

「でもね、お金はなんとでもなると思っていたんです。そこで、仕入れ先、知人、お客に計画を話して、スポンサーになって欲しいと伝えました。子ども1人分のパスポート代、昼食代、交通費を出してくれれば、子どもたちはいい思い出が作れる。一緒に1日過ごして、遊んでほしいと伝えたんです」

結果、110人に声を掛け、必要なお金が集まった。以来、この活動は12年間続いたという。

セミナーの最後に、彼は2人の友人の話をした。

1人は、世界的な音楽家になった女性の話。エヴェリン・グレニーというパーカッショニストで、彼女は耳が聞こえない。もう1人は、高校アマチュアレスリングのチャンピンになり、その後、総合格闘技の道に進んだ男性アスリート、カイル・メイナードという選手の話。彼には手足がない。
この話が終わった後、スキナー氏は、

「What is your excuse?(君の言い訳は何だい?)」

こう、静かに問いかけた。

思いがあるなら、やらなければならない。夢があるなら、進むべきだ。心に目を向ければ、お金、人、時間といったあらゆる制限は言い訳にすぎない。聴衆の心に、そのメッセージは深く染み渡ったはずだ。

スキナー氏は筋肉隆々の外国人であり、見た目は松下幸之助と似ても似つかない。しかし、人の心をひらくという点では、ひょっとすると松下幸之助に通じる力を持つ達人かもしれない。

取材、執筆: ライター 伊達直太

著者紹介

ジェームス・スキナー(じぇーむす・すきなー)

経営コンサルタント

1964年、アメリカ合衆国生まれ。現在、世界を旅しながら生活を送っている。アメリカ国務省、財団法人日本生産性本部の経営コンサルタント、フランクリン・コヴィー・ジャパンの代表取締役社長、多くのテレビ番組を盛り上げる経済評論家の経歴を持つ。

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