2015年10月28日 公開
2023年05月16日 更新
2015年3月期決算で日本企業初の「純利益2兆円超」となったトヨタ自動車。その好業績を支えるベースの考え方が「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」であることは有名だ。では、具体的にはどんな「整理術」「整頓術」を持っているのか。トヨタ流の伝道師として知られる〔株〕OJTソリューションズに教えていただいた。
整理・整頓の目的は「キレイに並べる」ではない!
整理・整頓はなんのためにするのか? 身の周りのモノをキレイにそろえて並べることや、それによって気持ちがすっきりすることが目的だと思っている人もいるかもしれないが、それはトヨタ流ではない。トヨタが考える整理・整頓とは、細かいムダをなくし、個人の業務の効率を上げ、ひいては会社の業績を上げるためのものだ。だから、整理・整頓も立派な業務の一部。「整理できていないように見えても、自分には何がどこにあるかわかっている」という言い訳は通用しない。不要なモノがたくさんあれば、それだけ、管理したり探したりする時間が余計にかかる。個々人のこうした時間を集約すれば、確実に業績にマイナスの影響を与えている。
「工場ではそうかもしれないが、オフィスでは違う」と言う人もいるかもしれない。しかし、OJTソリューションズによれば、「違いはない。あるとすれば『工具とペンの違い』だけだ」という。実際、事務系の職場での指導実績もある。トヨタ流の整理・整頓をオフィスで実践し、業績を伸ばした会社は数多いのだ。
[トヨタの整理]
「いるモノ」と「いらないモノ」を分けて、「いらないモノ」を捨てる
1 時間を「判断基準」にする
整理とは、いらないモノを捨てること。これがなかなかできないという人は多いだろう。それは、「いるモノ」と「いらないモノ」を分ける「判断基準」がないからだ。判断基準があれば、迷わずに分けることができる。
トヨタが判断基準の1つとしているのが「時間」だ。時間を基準にして、身の周りのモノを「今、使うモノ」「いつか使うモノ」「いつまで経っても使わないモノ」の3つに分けている。「今、使うモノ」は、もちろん「いるモノ」。「いつまで経っても使わないモノ」は、即刻処分するのが原則だ。
悩むのが「いつか使うモノ」だろう。これについては、「いつまでに使うか」という期限を設けて、その期限が過ぎれば「いつまで経っても使わないモノ」に格下げし、処分するのをルールにする。期限はできるだけ短く設定すること。一気に短期間に設定することに抵抗があるのであれば、少しずつ期間を短くしていってもよい。
2 「発注点」を作って、余分なモノを持たない
トヨタでは「必要なモノを必要なだけ持つ」ことが徹底されている。余分なモノは、いらないモノだからだ。
しかし、人はついつい余分なモノを持ってしまう。あなたのデスクの中には、黒いボールペンが4本もあったり、新しいノートが5冊もあったりしないだろうか。黒いボールペンはせいぜい2本、新しいノートも1~2冊あれば十分だろう。部署で共有のものがあれば、もっと少なくていい。それ以上は余分なモノだ。
「必要な量」の基準を決める際に重要なのが、それを調達する際にどれくらいの時間が必要かということ。たとえば、総務部などで一定量の在庫を常時持っている備品であれば、個人で余分に在庫を持つ必要はなく、1個で十分。一方で、コピー用紙など、発注~到着まで時間がかかるものであれば、その調達時間の間に使う量だけは最低限、在庫を持っておく必要がある。このような要素も見込んだうえで、発注点を設定しておくとよい。
発注点は、付箋を貼ったりカードを挟んだりして、ひと目でわかるようにしておくこと。
3 書類は「先入れ先出し」で処理する
同じモノであれば、先に仕入れたほうを先に使う。そうすれば、モノが劣化して使い物にならなくなることを防げる。これをトヨタでは「先入れ先出し」と呼ぶ。デスクでの書類の整理でも「先入れ先出し」の考え方が基本だ。当然、納期の余裕度を考慮する必要はあるが、先に手元に来た書類から処理していかなければ古い書類がデスクに溜まっていってしまうからだ。
まず、デスクの上に書類を受け取るためのトレーを1つだけ用意しよう。書類の入り口を1つに限定するのだ。そして、そこに入ってきた書類を、入ってきた順番に処理する。いらない書類は即刻処分。保存が必要な書類はファイルに綴じてデスクの上からなくす。すぐに取りかかれない書類は、案件ごとにクリアホルダーなどに入れてトレーに戻す。このとき、クリアホルダーに「○月×日までに処理」「○○さんの回答待ち」などの期限を書いた付箋を貼って、放置することを防ぐのも重要だ。