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12月より開始「ストレスチェック制度」って何?

2015年09月13日 公開
2023年03月08日 更新

武神健之(医師/医学博士)

テストの受検は義務ではないが……

からだの健康診断(定期健康診断)は、企業には実施義務、社員には受診義務があります。
一方、ストレスチェック制度は、社員が50人以上いる事業場は実施する義務がありますが、社員が49人以下の事業場は努力義務です。また、メンタルヘルス不調で治療中などのため、ストレスチェックテスト受検の負担が大きい等の特別な理由のある人もいる可能性を配慮して、ストレスチェックテストの受検は任意であり、社員には受検義務はありません。受検義務はありませんが、社員は受検することが望ましいとされています。

 定期健康診断では、健康診断結果は事業者にも通知されますが、プライバシー保護の観点より、ストレスチェックテストの結果は、ストレスチェックテストを実施した医師または保健師等から労働者に直接通知され、労働者の同意を得ずに会社に提供することはできません。また、高ストレス者が面接指導を申し出たとき、そのことを理由にその社員に不利益な扱いをしてはならないとされています。

 

4人に1人は相談相手がいない、できないという現実

平成25年の労働安全衛生調査(実態調査)によると、働く人で、強い悩み、不安、ストレスを持つ人は52.3%と言われています。その強い悩み、不安、ストレスを持つ人たちに、「強い不安、悩み、ストレスを、相談できる人はいますか?」と聞いたところ、「いる」と答えたのは90.8%、「いない」と答えたのは8.6%でした。

ただ実際に、「強い不安、悩み、ストレスがあるときに相談しましたか」と聞いたところ、「した」と答えたのは75.8%、「相談していない」は24.2%でした。実際には4人に1人が、強い不安、悩み、ストレスを抱えても、人に相談できないことがわかりました。

<参考:H25労働安全衛生調査(実態調査)>http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h25-46-50_01.pdf

実際に相談したと答えた人たちに、「相談して、強い不安、悩み、ストレスは、解消されましたか?」と聞くと、「解消した」が33.1%、「解消はしなかったが気が楽になった」が56.2%、「解消もされず、気が楽にもならなかった」が4.7%でした。

あわせると89.3%の人が強い不安、悩み、ストレスがあるとき、人に相談することにより解消するか、解消しなくても楽になったと答えています。つまり、相談できれば約9割の人は強い不安、悩み、ストレスがラクになるのです。

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著者紹介

武神健之(たけがみ・けんじ)

医師・医学博士

医師(MD)、医学博士(PhD)。日本医師会認定産業医。
一般社団法人日本ストレスチェック協会 代表理事。
産業医として外資系の金融業・コンサルティング業・IT業・輸送用機器業・教育業、邦人企業など20以上のグローバル企業で年間1,000件、通算10,000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行っている。2014年6月、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、学校や会社では教えてくれない不安とストレスに上手に対処し悩まない技術、落ち込まない技術の手法を説いている。

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