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「考える力」を高める 哲学者の言葉

2015年09月04日 公開
2023年05月16日 更新

小川仁志(哲学者/山口大学教授)

実存は
本質に先立つ。

(サルトル『実存主義はヒューマニズムである』)

これはフランスの哲学者サルトルの言葉です。わかりやすく言うと、自分の人生は自分で決めることができるという意味になります。実存とは自分のこの存在のことで、本質とは運命のことです。つまり、人間はすでにあるなんらかの本質に支配された存在では決してなく、自分自身で切り開いていくべき実存的存在に他ならないというわけです。サルトル自身、そうやって社会を変える運動に積極的に関わっていきました。その態度を「アンガージュマン」といいます。

物は最初から運命が決められていますが、人間はアンガージュマンすることで、望むように変わっていけるし、世の中さえも変えていけるのです。そう思うと、なんだか生きる勇気が沸いてきませんか?

 

考えるということは、
環境をコントロールするための道具である。

(デューイ『論理学説研究』)

これはアメリカの哲学者デューイの言葉です。わかりやすく言うと、知識は世の中を変えるための道具であるということになります。彼は、プラグマティズムというアメリカ生まれの思想を発展させた人物です。プラグマティズムとは、うまくいけばそれで正しいとする思想です。

そこからデューイは、思想や知識などというものは、それ自体に目的や価値があるのではなく、人間が環境に対応していくための手段に他ならないと主張し、知識を道具としてとらえることを提唱したのです。いわゆる「道具主義」と呼ばれる立場です。

私たちはとかく知識をただの薀蓄のようにとらえがちですが、問題解決の道具として見直せば、もっとうまく活用できるようになるはずです。

(『THE21』2015年6月号より)

著者紹介

小川仁志(おがわ・ひとし)

哲学者、山口大学准教授

1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。哲学者・山口大学准教授。米プリンストン大学客員研究員(2011年度)。商社マン、フリーター、公務員を経た異色の哲学者。商店街で「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。専門は欧米の政治哲学。
著書に『市役所の小川さん、哲学者になる 転身力』(海竜社)、『人生が変わる哲学の教室』(中経出版)、『アメリカを動かす思想』(講談社現代新書)、『7日間で突然頭がよくなる本』(PHPエディタース・グループ)、『超訳「哲学用語」事典』(PHP文庫)などがある。

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