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好景気の今こそ、「自分のお金と生活」を守る対策を!

2015年07月31日 公開
2024年10月11日 更新

森永卓郎(経済アナリスト/獨協大学教授)

 

誰にとっても資産運用が必須の時代に

 森永氏が予測するように、これからの日本が「超格差社会」に突入するとすれば、それに向けて、私たちはどのように対応すれば良いのだろうか。

「選択肢は二つあります。一つは、すでに大企業で正社員の職を得ている人は、あくまでその中で勝ち組になることを目指して頑張る、というものです。ただ、ホワイトカラーエグゼンプションが導入されれば、正社員は残業代ゼロで死ぬほど働きながら成果を上げ続けることが求められます。それが幸せな生き方かといえば、あまり幸せそうには見えません。

 もう一つの選択肢は、たとえ収入が激減したとしても、その中で、持続可能で、なおかつ幸福感を得られるようなライフプランを設計することです。

 米国は格差社会だと述べましたが、米国の低所得の人たちが必ずしも不幸なわけではありません。地方に行けば、仕事はほどほどにしつつ、家族や友達との交流や趣味を大切にしながら楽しく生きている人がたくさんいます。彼らは幸せの基準をお金には置いていません。日本人だって、そういう生き方に転換すれば良いのです。

 私のお勧めは、首都圏に住んでいる人であれば、都心から60km前後離れた『トカイナカ(都会と田舎の中間)』にマイホームを購入することです。生活費はいくらでも節約できますから、家さえ確保しておけば、路頭に迷うことは、まずありません(後のコラム参照)。

 一定程度の貯金をしておくことも大事。貯金があれば、お金のために神経をすり減らしてまで働かなくてすみますし、急な出費があったときにも対処できます。つまり、お金に自分の生活を振り回されないために、お金を貯めておくことが大切なのです。

 加えて、物価が上がってインフレになることが予想されるこれからの時代は、普通預金だけでは、資産の価値が目減りしていくリスクがあります。お金持ちではなくても、自分のお金を守るために、資産運用が必要になるわけです。

 資産運用は、リスクを減らすために、分散投資が基本です。株、債券、外貨など、さまざまな投資対象を組み合わせて運用する必要がありますし、株なら株の中でも複数の銘柄を保有しておくことが大切です。

 投資は水物ですから、全財産を注ぎ込んで一か八かの勝負に出てはいけません。お金持ちは、一度勝負に負けても、次に注ぎ込むお金がまだ十分にありますから、投資の世界でお金持ちを相手に戦っては絶対に負けます。一攫千金を狙うのではなく、今後の生活費を確実に確保するために、資産運用を行なってください。

 ほどほどに働き、持ち家を確保し、貯金をしたうえで、資産運用も堅実にする。そして、トカイナカでの日々の暮らしをウンと楽しむ。そういう生き方が、これからの時代の幸せの形だと思います」

 

[COLUMN]「​トカイナカ」に持ち家を確保しよう

 これからの時代は、給料だけではなく、定年退職後にもらう年金の受給額も、現行の60%ぐらいにまで減ります。だから、老後の出費を抑えるためにも、やはり持ち家があったほうが良い。

 トカイナカであれば、住宅の購入費が都心よりも断然安くすみます。ローンを払い続けるのは確かに大変ですが、払い終えれば、あとはウンとラクになります。

 そのうえで、トカイナカで暮らす幸福感を、自分なりに見つけ出すことです。トカイナカは、それなりに都会ですから文化的な刺激もありますし、ちょっと足を伸ばせばアウトドアを楽しむ環境にも恵まれています。また、人間関係も、都会ほど希薄でもなければ田舎ほど濃くもなく、ちょうど良い塩梅です。考え方次第では、都心よりも充実した生活を送ることができるのです。

 

《『THE21』2015年8月号より》

取材・構成:長谷川 敦  写真撮影:まるやゆういち

著者紹介

森永卓郎(もりなが・たくろう)

経済アナリスト

1957年、東京都生まれ。1980年、東京大学経済学部卒業。経済企画庁総合計画局、三井情報開発㈱総合研究所、(株)UFJ総合研究所を経て、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学と計量経済学。堅苦しい経済学をわかりやすい語り口で説くことに定評があり、執筆活動のほかにテレビ・ラジオでも活躍中。

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