2015年07月22日 公開
2023年01月05日 更新
創業2年で国内の電動バイクのシェアトップを獲得し、アジア各国でもそのシェアを伸ばしているTerra Motors。成長著しいアジア市場で、自社製品を売り込むためにどのように話し、営業活動をしているのか。
自ら営業もこなす徳重徹社長にお話をうかがった。
「一緒にこの国の産業を創っていきましょう!」
これは、バングラデシュで合弁会社を立ち上げるための商談をしたとき、契約の決め言葉となったものです。相手はこの国におけるバイクのトップメーカー。弊社の主力商品である電動バイクを現地で製造販売するために話を進めてきたのですが、こちらが提案した出資比率に相手がなかなか納得せず、交渉は長引きつつありました。しかしこのひと言で、相手は合弁会社の設立を決心してくれたのです。
アジアのリーダーたちは、自分の国の将来を真剣に考えています。たとえばバングラデシュは、今のところ国を支えるのは繊維産業だけです。しかし、私たちが進出して現地で電動バイクの組み立てをすれば、そこに新たな産業が生まれ、国の経済をさらに拡大することもできるかもしれない。自社の利益はさておき、自国の発展や未来を強く願う彼らの情熱は、まさに日本経済の礎を築いた戦後日本の経営者のよう。私の信念と情熱を込めて伝えた、偽りのないこの言葉が、彼らの持つ信念と情熱に響いたからこそ、私と一緒にビジネスをしようと決意してくれたのだと思います。
テラモーターズは創業当時から、グローバル市場で勝負してきました。社長である私も自らアジア各国へ営業に飛び回り、これまでにベトナムやフィリピン、バングラデシュやインドなどで、電動バイクを現地で製造販売するための合弁会社や販売拠点を立ち上げてきました。
そのとき、初めて会う方に私が必ず話すのが、自分の信念や想いです。営業される相手にしてみれば、私や私の会社が、新しくビジネスを始めるに当たって信用・信頼に値するのかを判断することが何より重要。ですから営業では、ビジネスプランの提案や自社商品の説明よりも先に、まずは自分がどんな考えを持ち、何を目指しているかを語るべきなのです。
自分の信念を伝えるために、私はいつも二つのことを話しています。一つは、「私たちは日本発のメガベンチャーになります」ということ。私が本気で「日本からアップルやグーグルを越えるような世界トップクラスのメガベンチャーを創ります」と話すと、チャレンジ精神を高く評価する海外では、初対面でも敬意を払ってもらえるのです。
自己紹介を兼ねて、自分がどんな挑戦をしてきたかを話すこともあります。「私は日本の大企業で働いていましたが、世界で活躍する起業家を目指して会社を退職し、アメリカに留学して、シリコンバレーのベンチャーで経営の経験を積みました」といったチャレンジのプロセスを話すと、相手に「一緒にビジネスをするのにふさわしい人間だ」と思ってもらえるようです。
もう一つは、「クリーンで持続可能な社会を実現したい」ということ。いくら自分の情熱を語っても、一方的なものでは相手にとって意味がありません。私の情熱が、相手の利益につながると伝える必要があります。アジア各国では、経済成長と人口増加に伴いバイク利用者が増え、排気ガスによる大気汚染が悪化しています。各国のリーダーたちは、この問題を深刻に受け止めている。ですからこの話をすると、「環境に優しい電動バイクを広めたいという私の情熱は、あなたの国にも価値をもたらします」と伝わるのです。
更新:11月23日 00:05