「お金持ち」になるにはどうしたらいいのか。そんなストレートなタイトルの本『お金持ちになるための本』を発刊したのは、青山学院大学教授で、会計学の知識をフルに活用して投資家としても活躍する榊原正幸氏。
そんな榊原氏が主張するのが、「今後は、投資を考えない人はじり貧になっていく」ということ。それはなぜか。そして、これからの日本経済はどうなっていくのか。お話をうかがった。
榊原さんは大学教授としての活動と並行して、「投資」の意義についてメディアで語ってこられましたよね。なぜ今、投資を考えるべきなのでしょうか?
「一言で言ってしまえば、日本という国が『コッテコテのインフレ政策』を取っているからです。大規模な金融緩和によって大量のマネーを市場にばらまいており、それをいつやめるかという『出口戦略』も見えてこない。先日も参議院議員の藤巻健史氏が国会で『出口戦略』について質問していましたが、明確な回答はありませんでしたよね。とにかくもう日本政府は『インフレ』にしたくてたまらないわけです」
通貨の価値が下がり、物価がどんどん上昇していく「インフレ」には、当然、弊害があります。なぜ政府はインフレを望むのでしょうか。
「莫大な国家の債務をチャラにしたいからにほかなりません。ご存じのとおり日本には莫大な債務があります。ただ、1,000兆円の借金も、インフレで物価が2倍になれば、実質的に500兆円になりますよね。
ここで私がもう一つ、注目すべきだと思っているのが『マイナンバー制』です。これは国民一人ひとりに番号を付けることで、業務を効率化するための施策と言われています。でも、実際には一人ひとりの財産をしっかりと把握して、将来的に主に富裕層への財産課税を行なうというのが第一義的な目的だと、私は見ています。現在のインフレ政策が失敗して、ハイパーインフレになってしまった場合の防波堤として財産課税も視野に入れているのです」
先日、厚労省の年金情報流出の問題などもあり、国民の間では抵抗が強くなっています。
「それでも、国がマイナンバー制を考え直そうなんて動きはまったく見られませんよね。つまり、国としてはなんとしてもマイナンバー制を導入し、税収を増やしたい。インフレによって借金の負担を減らすと同時に、課税を強化して収入も増やす。インフレ政策とマイナンバー制による財産課税に対する準備はいわば、車の両輪のようなものです。国が強い意志を持ってこれらを導入しようとしている以上、インフレと課税強化は不可避と考えるべきです」
インフレが不可避となると、当然、なんらかの対策が必要となりますよね。たとえば、どんな対策が考えられますか?
「まず、不動産ですね。インフレになれば不動産価値も上がりますから、強力な『インフレ対策』となるわけです。たとえば自宅購入を検討している人は、インフレ対策という面からもお勧めです。いわば『ディフェンスとしての自宅購入』です。ただし、物件は慎重に選ぶべきですし、金利上昇のリスクがあるので、借金の金利は絶対に固定でなくてはなりません」
現在の不動産価格は「バブルだ」という話もあります。
「確かに、都心のいわゆる『タワーマンション』はちょっとバブル気味ですね。ただ、普通のマンションは価格が上がりつつあるとはいえ、まだバブルというほどではないでしょう。私の予測ではズバリ、2018年末まで不動産価格は上がり続けます」
そう言い切れるのは、なぜでしょうか?
「いわゆる『不動産課税』の問題です。東京オリンピック開催が決まったのは2013年9月。当然、多くの人が不動産価格の上昇を見込んで不動産をその直後から買い始めたわけです。そして、それに対して不動産課税が軽減されるのが満5年経過後の1月1日以降、すなわち2019年1月1日以降なので、この時期以降は不動産を売る人が増えると考えられるからです」
その後、大きな下落があると考えられるのでしょうか?
「それでも、全体的にインフレムードなので、一気に大きくは下がらないのではないか、と思います。おそらくは2022年頃が底になるかと思いますが、その頃には不動産価格も下がって今と同じくらいか、少しだけ安いかくらいになるかな、と思われます」
そういう意味では、今、不動産を買うのはまだ間に合う?
「今すぐがギリギリのタイミングでしょうね。ただ、物件はしっかり選ぶ必要があります。やはりお勧めできるのは都心の一等地、駅チカ。地方都市でもその都市の一等地を選ぶべきです。少し高くても、値崩れの少ない物件を選びましょう」
更新:11月21日 00:05