「いよいよ英語を勉強しなくては……」と考えている読者も多いに違いない。
しかし、「以前に英語の勉強を始めたときは続かなかった」「いまからでも間に合うのだろうか」と不安を覚える人もいることだろう。
40代以上の読者が英語の勉強に取り組むには、どんなやり方がふさわしいのか?
その答えを探るべく、英語勉強法に精通した2人のプロにアドバイスをいただいた。
※本稿は、『THE21』(2012年9月号)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
【松本秀幸】(まつもと・ひでゆき)
TOElCテスト満点英語習得コーチ
1969年、広島県生まれ。英語圏での生活経験がないにもかかわらず、独学でTOEIC990点(満点)、英検1級、仏検準1級、中検2級を取得。米国、中国およびヨーロッパ企業との国際的サプライチェーンでのビジネス経験を通して培った「結果を出す英語力」と「最適化コンサル力」を活用したパーソナルコーチングやセミナー、コンテンツ企画・制作などで好評を博している。
著書に、『 iPhone 英語勉強法』シリーズ(日本実業出版)、『英語は図で考えなさい』(フォレスト出版)など多数。
【晴山陽一】(はるやま・よういち)
作家/英語教育研究家
1950年、東京生まれ。早稲田大学文学部哲学科卒業後、出版社に入り、英語教材の編集、学習ソフトの開発などを手がける。97年に独立し、英語関連書籍を中心に執筆活動を展開。アイデアの豊富さとわかりやすさ、面白さに定評がある。2010年からは、毎晩10時半からツイッターで「10秒英語塾」を開講。そのユーモアのある“つぶやき”によって、日本中のファンを楽しませている。
著書は、『英単語速習術』(ちくま新書)、『すごい言葉』(文春新書)、『英語ベストセラー本の研究』(幻冬舎新書)など100冊以上。
ある程度以上の年齢になって英語の勉強を始めたいと考えている読者のなかには、「いまからでも間に合うだろうか」という不安を抱く人もいるだろう。若いころに比べて減退している記憶力、いまさら受験勉強のような勉強ができるのかなど、心配になる要素はたしかにある。
これらの不安に対して、「40代での語学学習に障害があるとは思わないし、第一、ビジネスマンが受験勉強のような勉強をする必要はないのです」と話すのは、多数の英語勉強本を執筆してきた晴山陽一氏だ。
記憶には、客観的事実に関する「意味記憶」と、関連する事柄も一緒に記憶する「エピソード記憶」がある。晴山氏によると、学生のころのように英単語をひたすら覚える意味記憶ならば、たしかに若い人のほうが有利だという。
しかし一方で、40代のビジネスマンが英語を学ぶ場合、仕事で使う英語や、自分が興味関心のある分野の英語を学ぶことが多い。「これは文脈で覚えるエピソード記憶に関連しており、学生時代のようにやみくもに単語や例文を覚えるやり方とは記憶の仕方が違います」と晴山氏は指摘する。
つまり、40代だから英語学習に不利なのではない。40代にふさわしい英語勉強法さえ身につければ、40歳からでも遅くはないというのである。
では、40代にふさわしい英語勉強法とは、どのようなものだろうか。
「ある程度以上の年齢の人こそ、自分にふさわしい英語勉強法をよく見極める必要があります」と話すのは、英語習得コーチを務める松本秀幸氏。若者より時間がかぎられ、しかも忙しい仕事の合間に勉強するのであれば、当然、できることは限定される。
「だからこそ、まずは英語で何をやりたいのかを明確にすることが大切です。英語を学ぶことは時間とお金の投資ですから、それによって人生をどう豊かにしたいのかを考えることから始めるべきです」(松本氏)
やりたいこと、やるべきことが明確になれば、それを実現するためにどういう英語を身につければいいかを考えていけばいい。その点で、「40代のビジネスマンのほうが、経験の少ない若い世代よりも有利」だと晴山氏は指摘する。
「かぎられた時間で一定の成果を求められるのは、仕事と同じです。ですから、仕事で実践しているやり方を英語の勉強でも活用すればいいのです。目的とそれにふさわしい最適な手段を考えるのが、大人の英語勉強法です」(晴山氏)
それと同時に大切になるのが、「自分で自分の学習をコントロールする感覚」だと晴山氏。
「学習者であると同時に、自分が自分の学習管理者にもなるのです。客観的に自分に何が足りないか、これから何をやったらいいかを判断する視点をもつことで、やらされ感やプレッシャーがなくなります」(晴山氏)
さらにもう1つ、「完璧をめざさないことも大事です」と松本氏は付け加える。なぜなら、「完璧にしよう」という気持ちが、挫折の原因になる場合があるからだ。
「考えてみれば、母国語である日本語でも完璧に使いこなすのは難しい。だから、英語を完璧にマスターできないのは当然です。ふだんの仕事では、完璧に仕上げるより早く仕上げたほうがいい結果を生む場合があるはず。英語学習も同じで、初めのうちは相手に伝わるシンプルな英語を意識することに集中すればいいと思います」(松本氏)
〔1〕「エピソード記憶」が活用できる
何らかの事柄に関連する内容を記憶するのがエピソード記憶。これは、若者よりも人生経験が豊富な大人のほうが、より有効に活用できる
〔2〕「仕事」の方法論を応用できる
日々簡単ではない課題の解決に取り組むのがビジネスマン。「英語も仕事」と割り切り、その「目的」を考えることで、ふさわしい「解決法」がみえてくる
〔3〕勉強にメリハリがつけられる
仕事での時間と労力の配分を応用して考えれば、「ここは適当でもOK」「ここはしっかりやる」と「要点」と「それほどでもないところ」の見極めがつく
更新:10月14日 00:05