2015年04月23日 公開
2023年02月01日 更新
――今ではまさに「英語の達人」の流水さんですが、かつては英語劣等生で、しかも英語を本格的に始めたのは30歳からだったとか?
「ええ、もともとはまったくの英語劣等生だったんです。それが、30歳の時にマンガ『ドラゴン桜』を読んでいて、そこに出てくるカリスマ英語教師が『英単語ターゲット1900』という単語帳を使っていたんです。私も学生時代に使っていたこともあり、なつかしくて、すぐに近所の書店に買いに行ったんです。
ただ、読んでみるとこれが全然わからない。ショックでしたね。いくら劣等生の私でも、さすがに基本的な単語は覚えていたはずなのに、それすらもまったく記憶にない。
それが悔しくて勉強を始めたのですが、単語の次は文法を、となり、気が付いたらハマっていた、という感じです」
――この時点ではまだ、あくまで個人的に学んでいただけなんですね。
「そんなとき、「12カ月連続で小説を刊行する」という企画がスタートすることになり、せっかくなので「英語」をテーマにしようと考えたのです。それが『パーフェクト・ワールド』(講談社)というシリーズなのですが、この本を執筆しているときはまさに24時間365日英語漬け。非常に苦労しましたが、さすがに英語には相当自信がつきました。「自分は英語の天才ではないか」と思ったほどです(笑)」
――やはりこの時期に相当、英語力が伸びたわけですか。
「それが、試しにTOEICテストを受けてみたら595点。600点で初心者レベル卒業と言われていますから、当時はまだそんなレベルだったわけです。
ただ、それでも私は嬉しかったんです。学生時代に落ちこぼれだった自分が、これだけの点数を取れた。そこで今度は「3年で満点を取ってやろう」と一念発起したわけです。しかも、その奮闘記を雑誌連載で公開しようということになりました。」
――それは、相当なプレッシャーですね(笑)。
「結局、連載の最終回でリスニング満点は達成できたのですが、リーディングでは満点とはいかず、925点止まりでした。ただ、その後もチャレンジを続け、2014年には990点満点を3回取ることができました。
925点から990点までは、それ以前とは別次元と言えるほど大変でした。TOEICは990点満点ですが、900点から990点までの間に険しい断崖絶壁があるのです」
――「英語劣等生」だった流水さんが、TOEIC満点を取れた原動力とは何だったのでしょうか?
「私はむしろ、自分の体験から、「劣等生ほど伸びる」と確信しています。劣等生だからこそ、ちょっと点数が伸びただけで喜べるんですよ。最初から英語ができたエリートだと、少し伸び悩んだだけで挫折してしまったりする。
私は今、英語を本気で身につけたい人たちと一緒に「社会人英語部」というサークルで一緒に勉強しているのですが、ずっと続けているのは、やはり元劣等生が多いです」
――今回の新刊『努力したぶんだけ魔法のように成果が出る英語勉強法』は、そうした体験から導き出された英語勉強法がいろいろと書かれていますが、中でも特に「英語劣等生」が最初にすべきことは何でしょうか?
「そうですね、私と同じく「単語帳」から入るのがいいのではないでしょうか。巷ではよく「聞き流すだけでいい」というような英語教材もありますが、テキストの意味がわからなければ何度聞いても頭には入ってきません。やはりまずは単語を覚え、意味を理解することから入るべきだと思います」
――やはり、流水さんが使っていた『ターゲット』がお勧めですか?
「その人に会った単語帳は人それぞれです。売れている単語帳ではなく、あくまで自分に合ったものを探すべきですね。ちょっとした文字の配置の仕方の違いなどで、使いやすさはずいぶん違ってきます。個人的な好みを重視することが大切です。
また、これは実際にコミュニケーションを取る際のコツですが、「自信過剰になること」も重要です。相手の言っていることがよく聞き取れなくても、「お前の話し方が悪い」くらいの態度で聞き直す」
――日本人は聞き返すのが苦手ですよね。
「でも、実際には訛りのある英語を話す人も多いわけで、臆せず聞き返していいと思いますよ。しかも、ちょっとキレ気味のほうがいい(笑)」
――「世界」を意識できるようになると、今まで1億人だった日本語小説の読者が、一気に20億人にまで広がる。これは非常に大きなことだと思います。
「そのとおりです。ただ、漫画やゲーム、アニメなどはすでに世界的に人気を博していますが、小説は言語の壁もあり、大きく遅れていた。だから日本では相当有名な作家の本でもほとんど英訳されていないのが現状です。
たとえば「TheBBB」では、『すべてがFになる』などで知られるミステリー作家の森博嗣さんの短編も英訳して発表していますが、実は森さんレベルの人気作家でも、それまでは1冊も英訳が出ていなかったんです。
森さんをはじめ、日本の小説にはまだまだ非常に優れた作品が、英訳されずに残っている。これからも、もっと多くの優れたコンテンツを全世界に発信していきたいと思います」
清涼院 流水(せいりょういん・りゅうすい)
1974年兵庫県生まれ。ミステリー作家、漫画原作者、英訳者。 「The BBB(作家の英語圏進出プロジェクト)」編集長。大学在学中の1996年、『コズミック』(講談社)で第2回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。以後、70冊を超す著作を刊行。執筆活動のかたわら30代から英語学習に開眼し、2014年5月にTOEIC(R)テスト990点(満点)を取得。2009年にはTOEIC(R)テストでスコアアップを目指す社会人仲間と「英語部」を発足、40人以上のメンバーを平均900点台へ導くなど、英語指導の領域にも活動を広げている。
おもな著書に、小説仕立てのビジネス書『成功学キャラ教授 4000万円トクする話』(講談社)、英語と京都と運命の物語『パーフェクト・ワールド』(講談社)、マイケル・ジャクソンの人生を描いた『キング・イン・ザ・ミラー』(PHPエディターズ・グループ)、日本TOEIC界の巨匠・ヒロ前田氏との共著『不思議の国のグプタ―飛行機は、今日も遅れる』(アルク)、『社会人英語部の衝撃 TOEIC(R)テスト300点集団から900点集団へと変貌を遂げた大人たちの戦いの記録』(KADOKAWA)、『TOEIC(R)テスト300点から990点へ、「7つの壁」を突破するブレイクスルー英語勉強法』(講談社)などがある。
更新:10月14日 00:05