2014年10月22日 公開
2023年05月16日 更新
続いて行なうのは、約30枚の資料の全体像の設計だ。DIではこの資料全体を「パッケージ」と呼んでいるという。
「キースライドの内容を1パラグラフずつスライドにしていく、というイメージですが、気をつけているのはまず、1枚につき1つ、アクションに結びつくメッセージを盛り込むこと。リサーチ結果をまとめる資料なら、「○○の現状について」というタイトルでもいいかもしれません。でも我々は戦略コンサルタントであり、「アクション」を生み出せなければ存在価値はない。したがってスライドのタイトルの多くは、たとえば『○○すべき』などのメッセージになっています。
そして、スライドのタイトル(メッセージ)だけをすべてつなげたとき、話の筋が完全に通っていなくてはなりません。つまり、タイトルを拾い読みしただけでも内容が理解できるかどうか。それが1つのチェックポイントになります」
さらにDIでは、資料の細かいところまで非常に気を配っているという。
「大事なのは資料の統一感です。同じDIの資料なのに担当者ごとにフォーマットがバラバラだと、お客様も混乱してしまいます。だから、たとえばこの言葉は漢字にするかひらがなにするか、数字の表記はどうするか、グラフの目盛りはどう取るかなど、かなり細かく決められています。たとえば、「/」はつねに半角の「/」にする、などです。
弊社にはこうしたチェックと修正を専門で行なう部隊もいますが、各担当もしっかりと確認するようにして、二重三重の確認を行なうようにしています。やはり統一感を持たせることは、企業ブランドという意味でも大切でしょう」
こうして作られる資料は、顧客にとって「聞いたこともない内容」「新しい提案」ばかりが盛り込まれているように思える。だが、「それでは相手は納得してくれない」と石原氏は指摘する。
「これは弊社の代表の堀(紘一氏)もよく言っているのですが、『相手が知っていることもあえて伝えてこそ、知らないことも飲み込んでもらえる』のです。確かに、我々が最終的に伝えるべきことは、相手にとっては知らない、新しい提案であるべきです。でも、いきなりそれを提言しても、なかなか納得してはもらえません。
そこで資料の入り口は、お客様が『よく知っている』ことからスタートするのです。誰でも日頃、課題意識を持っている内容に触れれば「そうなんだよ」と共感しますよね。共感が生まれて初めて、新たな提案にも耳を傾けてくださるのです。
だからこそ、最初のリサーチが大切なのです。私は『相手に憑依する』という言葉を使いますが、経営者から現場までとことん話を聞き、視線を同じレベルに合わせる。これはコンサルタントに限らず、すべての資料作りの基本だと思います」
石原英貴(いしはら・ひでたか)
〔株〕ドリームインキュベータマネジャー
京大工学部工業学科卒業。京都大学大学院工学修士、ノースカロライナ大学経営学修士(MBA)。ソニー〔株〕を経て、〔株〕ドリームインキュベータ(DI)に参加。ソニ-では、次世代リチウムイオン電池の研究開発製品化に従事。発明特許多数。DIでは、ハイテク、環境エネルギー、自動車等、技術分野を中心に事業戦略立案・実行支援に従事。
<掲載誌紹介>
2014年10月号
<読みどころ>今どきの会社員は、プレイングマネジャーとして上司と部下の両方の立場であることが多く、また会社員人生の中でその時期はとても長い。どちらの立場でも、縦横のバランスを保ち、円滑な人間関係を築けることが、プロのビジネスマンの条件だが、実際にはここで悩みを抱える人が多い。ひどいときは、人間関係によって体調を崩すことや、キャリアの妨げになることも。会社のためにも自分のためにも、組織で思う存分力を発揮するためには、人間関係の良好さは必須条件。そのための対人術やセルフコントロール術について、各界で活躍している方々や専門家の方々に指南していただいた。
更新:11月22日 00:05