2014年10月22日 公開
2023年05月16日 更新
《『THE21』2014年10月号より》
「メッセージ」と「共感」で相手を動かす
最近。「戦略コンサルタント」による資料の本をよく見かける。社運を左右する重要な提言を行なう戦略コンサルタントの仕事は、ときに数百万円から数千万円もの価値を持つ。いったい、どれほどすごい資料のノウハウがあるのか……。大手コンサルティングファーム・ドリームインキュベータ(DI)でビジネスプロデューサー・コンサルタン卜として活躍する石原英貴氏に、「DI流の資料作り」についてうかがった。
<写真撮影:長谷川博一/取材・構成:斎藤まどか>
「コンサルタントにとって、もちろん資料は大事です。ただ、私たちにとって資料とは、アウトプットを伝える手段に過ぎないのも事実です。メインは『何を伝えるか』であり、資料は目的ではなく手段。資料作成自体に費やす労力は、プロジェクト全体で決して多いものではありません。
1つのプロジェクトは、おおむね3ケ月がひと区切りです。10日から2週間に一度議論をして、途中で中間報告をまとめる。そこで方向性を確認し、さらに内容を精査して、最終報告を行ないます。途中、何度か資料を作りますが、最終報告の資料作成に費やすのは1週間ほどでしょうか。報告書の量としては、30枚ほどが目安になります」
逆に言えば、それ以外の時間は経営者や現場の人ヘインタビューをしたり、分析をしたりという作業に費やされるわけだ。では、そうしてまとめあげた提言を、どうやって資料に落とし込むのだろうか。
「まず行なうのは、『エグゼクティブサマリー』と呼ばれる最も重要なスライドを作ることです。ひと言で言えば、『本日申し上げたいこと』。つまり、このプロジェクトの要です。
このキースライドは、できれば1枚、最大でも2枚。そして、1枚は5パラグラフ以内に凝縮させるのがベストです。また、1パラグラフは2行以内、文字は16~18ポイントの大きなサイズで記します。当然、その分使える文字量も減るので、言葉を磨き上げ、短くする必要があります。これを我々は「クリスタライズ(結晶化)』と呼んでいます」
なぜ、重要な情報を短く「結晶化」しなくてはならないのか。
「人の記憶には、それほど多くの情報は残りません。あまり詰め込みすぎると、どこが重要かがわからなくなってしまいます。また、とくにお客様である経営者や役員の方々は忙しいので、何を言いたいか、何をすべきか、簡潔にまとめる必要があるのです。
極論すれば、このキースライド以外は提言をサポートする情報に過ぎません。私たちは通常4~5人のチームで稼働しますが、その中で『エグゼクティブサマリー』を執筆するのは基本的にマネジヤーの仕事。1枚書くのに、6~7時間かけて言葉を磨き上げます」
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更新:11月22日 00:05