2014年08月05日 公開
2023年01月12日 更新
電動バイクのベンチャーで国内最大手、テラモーターズ社長の徳重徹氏は大学受験に失敗。浪人時代、自信を失いかけたとき、勇気づけられたのが日本の起業家たちの物語だった。
ホンダの本田宗一郎、松下電器(現パナソニック)の松下幸之助、シャープの創業者早川徳次……彼らは困難を前にしても歩みを止めなかった。自分も起業家の生き方をしたい。40歳で、「日本発、世界的メガベンチャーの創出」へと踏み出したのは、危機感からだった。
急拡大するアジア市場は、韓国、中国、台湾勢が席捲。日本は幕末、太平洋戦争に次ぐ「第三の敗戦」をどう乗り越えるか。
山口県出身で、松陰の「此の道を興すには狂者に非ざれば興すこと能はず」の言も好む。広さ四畳半の本社は、一流大卒の「狂者」の若手が次々集まる「平成版松下村塾」。日本への使命感を抱いたベンチャーの出現は、明治維新、戦後復興に連なる歴史的必然を感じさせる。
■徳重徹
1970年生まれ。自費でMBAを取得し、シリコンバレーで活躍。帰国後テラモーターズを立ち上げ、日本の電気自動車産業をリードする。
ビジネスマンになぜ「教養」が必要なのか。それは「決定」と「決断」の違いに関わりがある。決定は、ロジックで答えが出せるのでコンピュータでも可能だ。一方、決断には判断という、人間的な行為がともなう。
判断には、直面する状況の意味を洞察し、あるべき姿を描く構想力と、その状況とどう向き合うか、明確な生き方が求められる。この構想力と生き方を支えるのが教養の力だ。
稲盛氏はJAL再建の意義を見抜き、正しいことを行なうという生き方に基づき、老骨に鞭打った。柳井氏は、欧米に比べ、洋服の伝統がない日本だからこそ常識に縛られず、発想できると考え、服を変え、世界を変える使命に身を投じた。徳重氏は「第三の敗戦」への危機感から、世界的メガベンチャーの起業を決意した。その決断力の根底には血肉化された教養がある。
不確実性が高く、状況が日々変動し、論理による決定だけでは前に進めない時代には、身についた教養こそがリーダーにとって不可欠な資質であることを、5人の事例は示している。
更新:11月22日 00:05