2014年08月05日 公開
2023年01月12日 更新
スティーブ・ジョブズがもし、「禅」を学んでいなければ、スマホの時代は到来しなかったかもしれない。大学入学後、精神世界に関する本を耽読したジョブズが行き着いたのが禅の世界だった。米西海岸で活動する日本人老師のもとに通った。
「抽象的思考や論理的分析よりも直感的な理解や意識のほうが重要」との気づきは以降の仕事人生を大きく左右する。ゼロックスの研究所で開発中のGUI(グラフィカル・ユーザーインターフェース)を見て、GUIを使った世界初のパソコンを着想したのも、この直感による。
ジョブズがとくに禅から学んだのは、余計なものをそぎ落とす「シンク・シンプル」の世界だった。機能を絞り込み、整理し、使いやすさを実現したiPhone、iPadは禅の心から生まれた。名物のプレゼンでもスライドは1枚1フレーズで、余白で語った。天才の発想の原点が日本発の思想にあったことを日本人は再認識すべきだろう。
■スティーブ・ジョブズ
1955年生まれ。アップルコンピュータ創業者。マッキントッシュ、iPod、iPhoneなど数々のヒット商品を生み出した伝説的経営者。2011年没。
ファーストリテイリング(FR)会長兼社長の柳井正氏の場合、郷里山口県が長州と呼ばれた幕末期の革命的思想家・吉田松陰の教えが、その決断や生き方を支えている。松陰は志のない「無志」と同じ音の「虫」をかけ、「志なき者は虫である」と語り、「志」の大切さを説いた。
この教えに倣い、柳井氏は、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という志を企業理念に据えた。ユニクロの「本当によい服」を着て、誰もが生活をよりよくすることができれば、世界はよりよく変わるかもしれない。
ユニクロの服は「人々にとってのよいライフスタイルを作るための道具」でありたい。道具であるから、機能的で高品質なベーシックなものを作る。すべては松陰に学んだ柳井氏の志から発している。
松陰はこうも言った。「已に真の志あれば、無志(虫)は自ずから引き去る。恐るるにたらず」。海外での世界一を目指す戦いもこの言葉が後押しする。
■柳井正
1949年生まれ。「ユニクロ」でアパレル業界に革命を起こし、ファーストリテイリングを飛躍的に成長させる。海外進出にも積極的に取り組む。
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更新:11月22日 00:05