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「教養」がスキルになる3つの意外な理由

2014年08月04日 公開
2023年05月16日 更新

『THE21』編集部

教養

近年、ちょっとした「教養ブーム」が起きている。歴史や宗教といった教養をわかりやすく解説する本が数多く発刊され、教養を説くテレビ番組も増えている。「日本人ビジネスマンには教養が足りない」という言葉もよく聞く。だが、この「教養」という言葉、非常に捉えどころがないのも事実だ。

「教養」とは何なのか? 何のために「教養」を学ぶのか? どんな「教養」を身につければいいのか? それは仕事にどのように役立つのか?

『THE21』2014年8月号では「〔総力特集〕スキルとしての「教養」入門」で深い教養を持ち、ビジネスの第一線で活躍してきた5人の識者の方々に、ビジネスマンが知っておくべき「スキルとしての教養」について教わった。

◇成毛 眞氏(インスパイア取締役ファウンダー/HONZ代表)
◇村上憲郎氏(村上憲郎事務所代表/元グーグル米国本社副社長)
◇守屋 淳氏(作家/中国古典研究家)
◇出口治明氏(ライフネット生命保険代表取締役会長兼CEO)
◇美月あきこ氏(CA-STYLE主宰/元国際線キャビンアテンダント)

どの方もそれぞれ独自の教養論を持っておられたが、ベースには共通するものが数多く含まれていることが、取材を通じてわかってきた。ここでは、「何を学ぶのか?」「なぜ学ぶのか?」「どう学ぶのか?」の3つの視点から、それらをまとめてみた。

※本稿は『THE21』2014年8月号より一部抜粋・編集したものです。

<何を学ぶのか?>やはり多いのは「歴史」と「サイエンス」

多かったのは歴史、とくに「世界史」だ。「過去を知ることで未来が読める」(出口治明氏)、あるいは世界情勢を読み解くためという理由とともに、外国人とのコミュニケーションの糸口として重要だという意見が多かった。

同じ理由で、「宗教」を推す人も多い。宗教はその人の思考に大きな影響を及ぼすからだ。「古典」を学ぶことにも同様の理由の他、古典は長年使われてきて、すでに評価が確立している(守屋淳氏)という視点も見逃せない。

そして多くの人が必須の知識として挙げるのが「サイエンス(科学)」だ。世の中がどう変わっていくかを知るために必須であり、実際、できる人はみな文系と理系の知識をバランスよく持っている。

「経済学」「政治」「哲学」は、社会の流れを知るベースとして、「アート」「サブカル」などは文化の流れを知るために不可欠な教養だ。

<なぜ学ぶのか?>コミュニケーションと決断のベースになる

まずは「コミュニケーション」だ。幅広い教養があればこそ多くの人と対話ができる。とくに外国人との間では必須。また、「自分を知るため」という答えも聞かれた。

たとえば中国古典や宗教は、実は日本人の思想に大きな影響を与えている。それを理解して初めて、自分を客観的に眺めることができるのだ。

そして、「答えのない時代に答えを出す」というのも重要な役割だ。過去と現代を結びつける、一見関係のなさそうな知識同士を結びつける、という発想法は重要なスキルになる。

また、「決断のベースになる」という視点も見逃せない。稲盛和夫氏、孫正義氏などが果断な決断ができるのも、そのベースに確固たる教養があるからだ。

だが結局、「人生を楽しむため」というのが究極の答えかもしれない。確かに、仕事だけの人生ではあまりにもつまらない。

<どう学ぶのか?>「本」を読むのはもちろん、自らの体験に落とし込む

やはり「読書」という答えが一番多かった。忙しい人ほど寸暇を見つけて読書をしている。我々は移動中などのコマ切れ時間をケータイやスマホなどに奪われがちだが、本もつねに持ち歩くようにしたい。

意外なところでは、成毛眞氏のように「テレビ」を重視する人も多かった。ただ、タラタラ観るのではなく、効率的に情報を取りにいく姿勢が必要だ。

また、出口氏が行なっているような「勉強会」も効果的だ。同じ志を持った人が集まることで、自然とモチベーションが高まるからだ。

そしてやはり、安藤忠雄氏が主張するように、学ぶだけでなく「現場へ出向く」ということが大事だ。アートを知るには美術館に足を運ぶのが一番だし、歴史にしても、できればその出来事が起きた場所も訪れておきたい。座学だけの知識は真の教養とは呼べないということだろう。

 

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