2014年06月11日 公開
2023年05月16日 更新
それでは、「睡眠リズムを崩さない」という考え方をもとに、不規則な日程の探夜のテレビ観戦を乗り切る方法を考えてみます。
今回のワールドカップの試合日程を見ると、最も注目を集める日本戦は5日に1度行なわれ、さらに比較的観やすい時間です。「とにかく日本戦だけは観たい」という人は、5日に1度のこの日だけ乗り切ればいいことになります。一方で、「他の試合も観たい」「決勝トーナメントはすべて観たい」という人は、ある程度の長丁場の観戦にどう対応するかを考えなければなりません。
ここでは、「一日対応型」と「長丁場対応型」に分けて、社会人の平均的な睡眠時間帯である「夜11時半就寝、朝6時半起床」のパターンで解説していきます(図3)。また、今回のワールドカップだけでなく、他の国際試合での深夜観戦にも参考になるように、さまざまな時間帯の試合を想定してみました。
「夜11時半に寝て、朝6時半に起きる」という普段の睡眠リズムを守るために、この時間帯に睡眠を取るようにします。つまり、試合開始前、あるいは終了後にある程度まとまった睡眠時間が取れそうな場合、その時間に眠るようにします。反対に、ひと眠りするには時間が短い場合は、そのまま起きていることをお勧めします。たとえば深夜1時からの試合の場合、11時半にふとんに入ったとしても、試合前の興奮や寝すごす不安などから、すんなり寝つけるとは思えません。このような場合は、試合終了まで起きているのが得策です。もし眠気があれば2時間程度早めに寝てもいいですが、通常、睡眠時間の前倒しは難しいので夜の仮眠が無難でしょう。
就寝時間が何時になっても、あるいはほとんど眠れなかったとしても、翌日は6時半に起きます。これは必ず守ってください。翌日は昼間に仮眠を取るなどして一日を乗り切り、夜はいつもどおり11時半に就寝。前日の睡眠不足から深い眠りを得られるので疲労の回復も早く、翌日からまた普段のリズムで生活することができます。
深夜観戦が3~4日連続して続く場合も、「一日対応型」を日数分繰り返すことで乗り切ることができるでしょう。睡眠不足が連続して続いた週の週末は、普段の起床時間から2時間までなら寝坊も問題ありません。ただし、それ以上長く眠ると、睡眠リズムがずれて休み明けがつらくなるため注意が必要です。
深夜の観戦で眠れなかった日の翌日、半休を取って午前中に寝ようと考える人がいるかもしれませんが、これはお勧めできません。昼まで眠るとその日の夜が眠れなくなり、睡眠リズムが崩れたまま抜け出せなくなります。あくまで起床時間を一定に保つことが大切です。
深夜観戦が1週間以上続く場合は、睡眠時間を大幅にシフトさせ、観戦期間中はその睡眠リズムを守るという方法がお勧めです。
深夜から朝にかけて不規則なスケジュールで試合がある場合、就寝時間を普段よりぐんと早め、たとえば夜7時に寝て深夜1時に起きる生活に変えます。試合開始時間が何時でも、また試合がなくても、この睡眠リズムは守り、寝坊は週2回程度にとどめること。そうすることで、ひどい睡眠不足や疲労を感じることなく深夜観戦を続けられるでしょう。
睡眠時間帯は、試合が始まるおよそ1週間前から段階的に早めていきます。うまくシフトさせるには、起床時間を早めていけば無理なくリズムを変えることができます。通常の6時半から始まって、5時半、4時半……と1時間ずつ早めていけば、1週間後には深夜1時起床のリズムに持っていくことができるでしょう。
また、試合期間が終わって通常のリズムに戻す場合は、就寝時間を遅らせていけば、比較的楽に元に戻すことができます。
「睡眠リズムを守る」ことが身体に負担をかけないための基本。自分なりの睡眠リズムを作り、試合観戦を存分に楽しんでください。
梶村尚史(かじむら・なおふみ)
医学博士。1955年、宮崎県生まれ。1981年、山口大学医学部卒業。1990年より、国立精神・神経センター武蔵病院勤務。アメリカ国立精神保鍵研究所(NIMH)への留学を経て、国立精神神経センター武蔵病院精神科医長。2003年、むさしクリニック開院,同年より杏林大学医学部非常勤講師。専門は精神医学、睡眠医学、時間生物学。睡眠医療認定医。著書に、『「朝がつらい」がなくなる本』(三笠書房)、『快眠ハンドブックj(PHP研究所)、『毎朝スッキリ起きる技術』(監修・光文社)など。
更新:11月22日 00:05