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「爆速経営」ヤフー副社長・川邊健太郎が実践する「即断即決の時間術」

2014年01月09日 公開
2023年05月16日 更新

川邊健太郎(ヤフー〔株〕副社長COO)

迷ったら「まずやってみる」

 社内に「爆速」を根づかせるためには、当然、自身も爆速を体現しなくてはならない。では、仕事のスピードを高めるためには具体的に何が必要なのか。

 「まず、行動を起こせない理由として『情報が足りない』ということがあります。でも、これだけ変化の激しい時代に、『さて、情報を集めるか』では遅い。普段から『情報感度』を高めておかなくてはなりません。

 そのためには『情報を主体的に捉える』ことに尽きます。たとえばニュースである会社の不祥事の謝罪会見が流れたとする。それを見て、『大変そうだなあ』ではなく、『自分だったら防ぐことができたか』『自分だったらどういう態度を取るだろう』などと考える。他人事ではなく自分事として考えるのです。

 すると、『なぜこうなったのか?』といった疑問が出てくる。そして『ではこの情報も調べてみよう』と、必要な情報が集まってくる。情報を主体的に見ていれば、情報はどんどん集まってくるのです。私が言うのもなんですが、ヤフーニュースのヘッドラインを眺めるだけではただの『情報マニア』です。

 私はつねにこの視点から見ているので、たとえば、テレビのアナウンサーがちょっと言い間違えただけでも、『なぜ今、言い間違えてしまったのだろう』と考えてしまうほどです」

 だが、情報を集めても、すべきことが決められずに先送りしてしまう人も多い。

  「この問題には、2つのケースがあるように思います。まずは、ほんとうに迷っているとき。この場合は、『まずやってみる』ことです。特にデジタルの世界では出してから修正する、ということが可能なので、迷ったらとりあえず出してみて、その結果を踏まえてすばやく修正する、というほうが結果的にうまくいきます。もちろん、そうではない業界もありますが、もしそれができる環境にいるのならば、まずやってみることをお勧めします。

 そして、会社なり自分なりの行動指針を持っておくことも重要です。たとえばヤフーの社員は名刺大のカードを携行しており、そのカードには『「課題解決」って、楽しい』『「爆速」って、楽しい』『「フォーカス」って、楽しい』『「ワイルド」って、楽しい』と書かれています。行動指針があれば、迷ったときにそこに立ち返ることができる。自分の指針、会社の指針は何かを改めて明確にしておけば、自然と行動は速くなります。

 たとえばヤフーでは最近、『出店料無料』というキャンペーンを打ち出しました。業界の常識から考えればとんでもない施策であり、もちろん、迷いもありました。ただ、そこで『これをやることはワイルドだよな』という思いがよぎったのです。もちろん、それだけではありませんが、決断を促した要素の1つであることは確かです」

「責任を取りたくない」では仕事は進まない

 そしてもう1つの「先送り」の要因が、「実は責任を取りたくない」と思っているということ。川邊氏は、実は多いのはこちらではないかと指摘する。

 「これに対しては当然、覚悟を決めて責任を取るしかありません。もちろん、失敗が許されない職場もあるかもしれません。でも、それでは面白くないと思うんです。やはりスピード感をもって新しいことにチャレンジしていくのが仕事の醍醐味だと思いますし、私は学生の頃に起業して以来15年間ずっと毎朝、『どんな楽しいことがあるだろうか』と思いながら目を覚まします。もっとも、寝る前は『今日はままならなかったなあ』と思いながら眠ることもあるのですが(笑)、それでも翌朝になればまた楽しみになっている。

 社是に『楽しい』という言葉を入れたのも、まさに同じ思いを社員にも共有してほしいからです。『仕事は楽しい』ということを再発見することも、仕事を先送りせず、スピード感をもって仕事をするためには大切なのではないでしょうか」

 そして、どれだけ忙しくても「趣味の時間」を取ることも大事だと言う。

 「切り替える時間がないと、人間は潰れてしまいます。土日はメールチェックくらいに留め、なるべく趣味の時間に当てています。ちなみに趣味は『読書』『釣り』などいろいろありますが、特に釣りに関しては、魚がかかるまではボーっとしているしかないので、自然といろいろなことを考えます。そういったときにこそ、アイデアが浮かんでくるものです」

 

川邊氏の提唱する「爆速」を実現するための3要素

   
1) 情報感度を高める

ヤフー社内では「赤ちゃんの肌のように情報に敏感に」ということで「ベイビースキン」という言葉を使っているという。

2) 意思決定のスピードを高める
ほんとうに迷っているならば、まずはやってみる。一方で、「責任回避したいだけでは?」ということも疑ってみるべきだ。

3) 実行する
まずやってみて、そして修正するというサイクルを回していく。また、実行して失敗しても評価される風土作りも重要だ。

 

川邊健太郎

(かわべ・けんたろう)

ヤフー〔株〕副社長COO

1974年生まれ。東京都出身。1998年、青山学院大学卒。大学在学中にインターネットベンチャー「電脳隊」を設立。代表取締役に就任。1999年、同業のPIMと合流するが、2000年にヤフー〔株〕が両社を吸収合併、ヤフー社員となる。以後、モバイル、社会貢献事業、政治、ニュースなど多様な事業担当を経て、2009年に子会社GyaOの社長に。2013年より現職。


<掲載誌紹介>

2014年1月号

<今月号の読みどころ>
やらなくてはならないことはわかっている、でも、なかなか手をつけられない。その結果、仕事がどんどん溜まってしまい、今日も一日が終わってしまった…。このような悩みを持つビジネスパーソンはきっと多いはず。そこで今月号では、各界のプロフェッショナルたちをインタビューし、「仕事スピードが速い人」「仕事を溜め込まない人」「短時間で成果を上げる人」たちに共通する要素を抽出しました。これを読めば“残業ゼロ”も夢ではありません。

 

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