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英語を話すのに「文法は要らない」は大間違い

2011年03月01日 公開
2023年05月16日 更新

市橋敬三(英語教育評論家/著述家/アメリカ研究家)

 

語彙習得の際の落とし穴

――まずは、英文法の例文をしっかりマスターする。ビジネス英語を含め、英単語の語彙を増やすのはその後でも遅くない?

【市橋】ええ、遠回りに思えるかもしれませんが、まずは中学の英文法を。語彙を増やすのはそれからです。単語を覚える際も、たとえばビジネス用語であれば実際にビジネスの場でその言語を使うシーンを想定しながら、文章で覚えるようにすると効率的です。

ただし、ここでひとつ重大な問題があります。あなたの使っている英語辞典に誤りがないかどうか、ということです。辞典が間違っているなど、考えたこともないでしょう。しかし実際には、誤りがたくさんあります。

たとえば、『shipping company』。この単語の日本語訳を『船会社』としている辞典がとても多いのですが、実際には船だけでなくトラック、飛行機、電車による 『輸送会社』として広く使われています。

なぜならshipは『船』という意味だけでなく、動詞で使うsendの意味も持っているからです。『just』は、『ちょうど』と訳している辞典がほとんどでしょう。例文として、It's just 5:00.とあるとしたら、その和訳は『ちょうど5時です』となっている。しかし、正しい訳は『まだ5時です』。『ちょうど5時です』という意味の英語は、lt's exactly 5:00.です。

また、『ちょうど100ドルです』と言う場合は、$100 even.であって、just $100.とは言いません。justが『ちょうど』の意味で使われるのは、時刻や金額などの数字が出てこないとき。

たとえば、That's just what I was going to say.=『それはちょうど、私が言おうとしていたことです』という場合なのです。こうした誤りは、挙げればきりがありません。

『辞書と首っ引きで英単語を覚えたのに、それを使ったらアメリカ人の商談相手に誤解され、コミュニケーションがとれなかった』という話を、私はよく耳にします。

――英語辞典選びには慎重を要しますね。

【市橋】ビジネスの場で使える英語を話したいと考えているなら、英和辞典・和英辞典よりも私の書いた『アメリカ英語表現辞典』、『アメリカ口語表現辞典』といった辞典を使ったほうがいいです。より正しい意味、表現が載っています。

――英文法をマスターすることのほかに、ビジネス英語のレベルを上げるために抑えておくべきことはありますか?

【市橋】日本とアメリカの文化の違いですね。これは、話し方に大きく影響します。アメリカは論理社会なので、何か主張するとき、伝えるときには三段論法で、まずは結論を言います。

ところが日本では、結論を後に回し、枝葉の部分から話し始める。英語を使うときもその調子で話をしていると、相手のアメリカ人としては『何が言いたいのか。早く結論を言ってくれ』と、イライラしてしまう。

そこへもってきて、意味を誤って単語を使うと話がますますちんぷんかんぷんになって、最悪の場合、商談が失敗に終わることになりかねません。

また、日本は集団社会のため、みな強い自己主張を避けますが、対してアメリカは個人主義社会。まず自分の意見を示さないと魅力がない、個性がないと捉えられてしまいます。とくにビジネスの場では、遠慮をせずにきちんと自己主張をすることが重要です。

ビジネス英語をものにしたい。そう考えるなら、英文法の例文を暗記しながら、ぜひ、こうした日米文化の差についても学び、研究してください。

 

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