2021年04月05日 公開
2023年02月21日 更新
リモートワーク全盛の時代だからこそ、「英語の表現」が重要になる……そう主張するのは、東進ハイスクール英語講師で、英語の書籍を何冊も発刊している土岐田健太氏だ。
「英語には敬語がない」というのは厳密には間違いであり、英語でもこうした丁寧表現がコミュニケーションにおいて大きな役割を果たすという。
一般的には英語は敬語がないとされます。たしかに日本語のように尊敬語や謙譲語などはありませんが、「丁寧な伝え方」は存在しています。プロフェッショナルとして「相手に一目置かれる話し方」をするためには、丁寧な伝え方が必要なのです。
なぜ「丁寧な伝え方」が今、大切なのでしょうか?コロナ禍において、海外とのやり取りもリモート会議やメールでのやり取りが増えてきています。世の中が不安定だと言葉足らずになりがちですから、「ひと手間」を加えることで仕事での付加価値を生み出すこともできるのです。
英語には「敬語」はないと言われていても、「ジェンダー」や「多様な背景を持つ相手の仕事」への配慮は日本以上に重要視されています。例えば、現代英語ではsalesmanではなく、salespersonと言いますし、policemanとは言わずpolice officerと言います。
また、呼びかける時は男性や女性に関係なく単にofficerというケースも多いです。敬語とは呼ばれなくても、言葉の選択や言い回しには相手への「敬意」が表れるため、英語を使う時には意識する必要があるのです。
実際に、英語のコミュニケーションの世界ではPoliteness(丁寧さ)が求められます。仕事の際には「命令」ではなく「依頼」をすることが、信頼される上司の特徴です。
仕事には「共通のゴール」が存在しています。ただ、上司が部下に一方的な業務の命令をするだけでは、なかなか動いてはもらえません。人の考え方には多様性がありますから、相互の理解を深めながら「共通認識」を作っていくことが大切になります。
「頭ごなしに命令」されたと感じるのと、相手から「敬意を払って依頼」されたのとでは次の行動に大きな変化が生まれるわけです。
英語で一例を見ていきましょう。
Please give me a hand.
「手を貸してください」
これはpleaseが付いているので、一見すると丁寧な物言いに思えます。しかし、英文のスタイルとしては「命令文」という形式をとっています。これは角が立つ言い方になる場合があるのです。
それでは、何と言えば「依頼」として気遣いが伝わるでしょうか? その時に必要なのは「助動詞の過去形」です。would / could / mightなどが代表的なものです。
これは「頭の中の思考モードの変化」を表すのに使われ、「(もしできれば)~するだろう/ できるだろう/ かもしれない」という丁寧さを出すことができます。
例えば、次のように言ってみると、丁寧さが伝わり好印象です。
Could you give me a hand?
「(もしよければ)手を貸していただけませんか?」
なぜ「現在」のことなのに「過去形」を使うのか。それは「現実とのギャップ」があるからに他なりません。現実から一歩下がった言い方にすることによって、相手への気遣いが伝わります。
相手に「現実は難しくても、もし可能ならば」という想いが伝えられると、相手も動いてみようという気になるのです。このように言い方ひとつに気を配るだけで、相手との仕事が円滑になることは多いのです。
「助動詞の過去形」の効果が理解できたところで、次にさらなる応用表現をマスターしてみましょう。
I was wondering if you would like to join us.
「もしかしたら加わっていただけるかなと思いまして」
この英文はI was wondering…で始まります。wonderは「~かなあと思う」という意味です。心の中で思っていることを伝えるということで、ワンクッション置く表現になるのですね。
I was wonderingから始まる表現は、「ものすごく丁寧」な印象を与えます。
さらに、後半には再び助動詞の過去形を使った<would like to+動詞の原形>という表現が出てきます。これにより、<want to+動詞の原形>に比べてさらに丁寧さを演出できます。「(もしできれば)~したい」というニュアンスとなり、丁寧さが二割増しになるのです。
もう1つ、英語圏の話者が好んで使う丁寧表現に、appreciateを使ったものがあります。
I would appreciate it if you could give me some feedback about the new system.
「新しいシステムについてフィードバックをいただければ幸いです」
これは最大級の丁寧表現として非常に便利なので、じっくり解説していきます。
まず、wouldを使うので仮定法の丁寧表現の一種になっています。
appreciateは「感謝する」という意味です。語源的にはpreciがpriceと同じで「価値」を表し、appreciate自体は「価値を見出す」という意味になります。そこから「相手のしてくれたことに価値を見出す」→「感謝する」となりました。
その先のitが何を指しているか、疑問に思うかもしれません。
これは前に出てきた内容を受けるのではなく、if以下で述べることを「予告する役割」があります。I would appreciate it(あることに感謝するでしょう)と述べることで、if以下の内容を意識してもらおうとする展開です。
よくクイズ番組などで「答えはCMの後」といったセリフが使われますが、このitは同様に、まさに先を気にさせる効果があります。
このように、丁寧表現を使うことで「相手への敬意・感謝」を伝えることができ、伝わり方が非常に好印象になるのです。
更新:11月22日 00:05