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2030年には35%の荷物が運べない? 企業間物流30兆円市場の危機

佐々木太郎([株]Hacobu代表取締役社長CEO)

佐々木太郎「THE21」

社会になくてはならない「物流」だが、トラックドライバーの人手不足をはじめ、大きな課題を抱えており、このままでは維持できない状態になっている。その課題解決にで取り組んでいるのが、㈱Hacobuだ。創業社長の佐々木太郎氏に話を聞いた。(写真撮影:丸矢ゆういち)

※本稿は、『THE21』2026年7月号の内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

2030年には35%の荷物が運べなくなる!?

――御社は「Data-Driven Logistics®」を掲げています。どんなデータを、どのように集めて、どう活かしているのでしょうか?

【佐々木】物流というと宅配を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、当社が手掛けているのはBtoBの企業間物流です。宅配の市場規模が2~3兆円なのに対して、企業間物流は30兆円以上あります。

工場から倉庫へ、また、倉庫から小売店へと製品を運ぶのも企業間物流ですし、工場へ部品や原材料を運ぶのも企業間物流です。あらゆる産業の中に企業間物流が横たわっています。

しかし、今、企業間物流は破綻しかけています。

まず、トラックドライバーの不足。現役のドライバーが高齢化していく一方で、ドライバーになる若い人たちが少ない。労働環境が厳しいからです。

そして、走っているトラックも積載率が4割くらいしかありません。

そのため、2030年には35%の荷物が運べなくなると言われています。

なぜ、ドライバーの労働環境が厳しく、積載率が低いのかと言えば、電話やFAXで情報をやりとりしているなど、昭和から仕事の仕方が変わっておらず、非効率だからです。

例えば、大型小売店には早く荷降ろしをしたいトラックが列を成し、結果として待機時間が長くなって、ドライバーの長時間労働の要因となっています。

当社が提供しているトラック予約受付サービス「MOVO Berth」を使えば、オンラインでトラックの到着時間を予約できます。その時間に到着すれば、待つことなく荷降ろしができるわけです。

荷物を受け取る側も、いつ、どれだけの人員を配置すればいいのかがわかりますから、シフトが組みやすくなります。

MOVO Berthを導入している拠点が増え、データが蓄積されると、トラックの動きも把握できるようになります。そのデータから、同じようなルートを走っているトラックが複数あることがわかれば、複数の荷主が同じトラックで共同輸配送をすることで、積載率を高められます。

実際、イオン九州など小売6社が参画する九州物流研究会と、共同輸配送の実証実験を始めています。

また、三菱食品には、当社の動態管理サービス「MOVO Fleet」を導入していただいています。三菱食品が委託している運送会社のトラックの動きをGPS端末で把握することで、従来は、各拠点の運送会社や担当者のみが持っていた情報が社内全体で見えるようになり、複数の拠点にまたがるエリアごとに運送ルートを最適化できるようになりました。

これからは、さらにAI-Driven Logisticsへと進化させていきます。

今年2月に提供を開始した「MOVO Adapter」は、AIを使って、様々な書式の帳票に書かれた情報を、手書きの文字も含めて読み取り、他のMOVOシリーズに取り込めるデータにするサービスです。

――なぜ、運送業界ではデジタル化が進んでこなかったのですか?

【佐々木】サプライチェーン・マネジメントというものが注目されたのが1990年代後半頃で、当時は出荷前の段階にボトルネックがありました。ですから倉庫などへの投資は進んだのですが、出荷後については投資が進まなかったことが、一つの要因だと思います。

また、運送業界は多重下請構造ですし、倉庫など、数多くのステークホルダーが絡んで複雑なことも、デジタル化の難易度を高くしています。

 

大義があるからこそ苦しい時期を乗り越えられた

――その複雑な業界に参入して、MOVO Berthは、バース(トラックの荷物の積み降ろしのための専用スペース)管理システム市場でシェア1位になっています。

【佐々木】創業当初は、運送会社に、運行データを得るための端末をトラックに取り付けていただくことを考えていました。そうした端末を販売しているのは2社だけの寡占状態で、価格が高かったので、安い端末を作れば使っていただけるだろうと考えたのです。

しかし、「荷主から取り付けろと言われれば取り付けるけど......」というような、積極的ではない運送会社が多く、また、ハードウェアの開発にも問題があって、うまくいきませんでした。

そんな中、大和ハウスグループの会社であるフレームワークス社の当時の社長に、荷主向けのセミナーに登壇する機会をいただきました。

そこで手応えを感じて、荷主に導入していただくサービスの開発へと方針を変えました。

――御社の他にも物流DXを手掛けるベンチャー企業はあります。それらと比較して、御社がうまくいった要因は?

【佐々木】2013~16年頃に創業した企業が多いと思いますが、今も続いている企業は少ないのではないでしょうか。当社も、MOVO Berthをリリースするまで、創業から5年間ほどは苦しかったです。

その後、国が物流の課題解決に力を入れるようになって、思いもよらない追い風が吹くようになったのですが、そこまで耐えられなかったところが多かったように思います。

当社の場合は、資金調達もうまくいって、耐えることができました。

また、当社の創業前から、アスクル創業者の岩田彰一郎さんに、ビジネスの大義について何度もお話をうかがっていました。当社の存在意義をしっかり設定できていたことが苦しくても諦めないことにつながり、大義を語ったことが資金調達にもつながったのではないでしょうか。

――起業はHacobuが3社目だとか。

【佐々木】1社目は、ドイツ企業の日本拠点でした。

その企業は、アメリカで成功した企業が登場すると、世界中で同じようなビジネスを立ち上げるんです。すると、その企業が海外進出をしようとしても、同じような企業がすでにあるので、進出しにくくなる。そして、その企業に各国の拠点を買い取ってもらう、という企業でした。

次に、自分でビジネスをしたいと思って立ち上げたのが、2社目の食のキュレーションECの会社でしたが、結局うまくいきませんでした。

その後、乳業メーカーのコンサルティングに関わったときに、初めて物流の課題に触れました。そして、この課題の解決には大義があると感じたのです。

やってみると、社会的意義のあることに取り組むほうが、自分はパワーが出るということに気づきました。

それに、課題を見つけると、その解決方法を考えるのが楽しいんです。

 

CLO設置義務化は大きなチャンス

――今年4月から、一定規模以上の荷主企業に物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の設置が義務付けられました。その影響は?

【佐々木】従来、物流の課題は物流会社の課題だと捉えられていました。しかし、これによって、荷主企業の課題だと明確に位置付けられました。

しかも、役員クラスですから、物流部門だけの課題ではなく、経営課題として扱われるようになります。投資も進むと思います。

――最後に、今後の展望を教えてください。

【佐々木】現在、MOVO Berthの利用事業所数は4万拠点に達しています(MOVO導入拠点に加えて、MOVOを利用する事業所のIDを合計した数字)。

私たちは全国の物流関連拠点は約11万カ所あると推計していて、2030年までに、その7~8割へネットワークを広げていくことを目指しています。

また、当社のサービスで解決できる課題の幅も広げていきたいと考えています。

プロフィール

佐々木太郎(ささき・たろう)

㈱Hacobu代表取締役社長CEO

2000年に慶應義塾大学法学部、09年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アンダーソン経営大学院(MBA)を卒業。アクセンチュア㈱、㈱博報堂コンサルティングを経て、米国留学。卒業後、ブーズ・アンド・カンパニーのクリーブランドオフィス・東京オフィスで勤務した後、ルイ・ヴィトン ジャパン㈱の事業開発を経て、11年にグロッシーボックスジャパンを創業。ローンチ後9カ月で単月黒字化、初年度通年黒字化(その後、㈱アイスタイルが買収)。13年、食のキュレーションEC&店舗「FRESCA」を創業した後、BtoB物流の現状を目の当たりにする出来事があり、物流の変革を志して、15年に㈱Hacobuを創業。

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