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日本がハイパーインフレに?「世界基準の人材」だけが生き残れる"残酷な未来"と対策

2026年04月07日 公開

藤巻健史(元米モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)在日代表兼東京支店長,前参議院議員[2期])

藤巻健史「THE21」

元米モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)東京支店長の藤巻健史氏は、ハイパーインフレが日本を襲うその日の到来を予言する。連載最終回の今回は、日本が今後辿るべき道筋と、資産を守るためにすべきことを解説してもらった。(取材・構成:坂田博史)

※本稿は、『THE21』2026年5月号の内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

真の資本主義国家になれば日本は復活できる

この連載で繰り返し述べてきたように、ハイパーインフレが日本を襲う「Xデー」が来ることは、まず間違いないだろうと私は考えています。

しかし、絶望する必要はありません。日本が抱えている借金約1342兆円(2025年12月末)という大マイナス状況がリセットされ、またゼロからスタートできると考えればいいのです。終戦後、どん底から復活したように、日本には復活できるだけの十分な潜在力があります。

ただし、条件が2つあります。1つは、何が悪かったのか、何を間違えたのかをきちんと検証し、原因を特定し、二度と同じ過ちを繰り返さないための法律や制度などをしっかりと整備すること。

2つめは、「資本主義国家日本」となる青写真を描き、それを実行すること。こう言うと、日本はすでに資本主義国家だという声が聞こえてきそうですが、私は、日本は社会主義国家だと考えています。政治家と官僚が主導する計画経済は、社会主義です。行きすぎた格差是正など、結果平等を求めるのも社会主義です。

私は、資本主義の宗主国であるアメリカの銀行で働き、生活した経験もあります。そうした目で見ると、日本は結果平等主義の社会主義国家にしか見えません。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)時代の外国人部下たちは、口をそろえて「日本は世界で一番成功した社会主義国だ」とその当時言っていました。

私の息子がアメリカ留学から帰ってきたとき、「国民の95%を比べれば、アメリカ人よりも日本人のほうが優秀だと思うけど、アメリカは超優秀な5%の人間が新しいシステムをどんどんつくって95%の人たちを引き上げている」と言っていました。

それを聞いて私もうなずきました。その5%の人のほとんどは、海外からの移民です。アメリカに行けば儲かる。アメリカに行けば世界で評価される。アメリカに行けば大金持ちになれる。こうした夢をもって天才がアメリカを目指し、アメリカの競争社会で揉まれながら切磋琢磨して成果を出しています。

他方、日本では円安が進んでいることもあり、海外に行く人が減っています。飛行機代も、現地での生活費も高くて「行けなくなった」というのが本当のところかもしれません。世界を知らない「井の中の蛙」ばかりになってしまっています。

日本に行きたいという外国人もいますが、その多くは観光目的です。日本で働きたい人たちは減っています。なぜなら、日本に行っても給料は高くない。慣習や規制が多くて新しいことに挑戦できない。ひと財産つくれたとしても相続税でもっていかれる。こんな国に来て働きたい人はいません。夢がないと人は集まりません。働いた人が儲かる。成功した人が金持ちになる。それによって経済も成長するのです。

 

競争社会からしかスーパースターは生まれない

こうしたことは、スポーツの世界を見ればよくわかります。大谷翔平選手が日本にいたら、日本のスターで終わったでしょう。野球の本場、アメリカの大リーグに行き、その熾烈な競争社会で勝ち抜いたから、アメリカの、世界のスーパースターになれたのではないでしょうか。

野球に限らずスポーツの世界では、海外に飛び出し、世界トップを競っている日本人がいます。あるいは世界トップを目指して、世界各国の競争社会に身を投じて研鑽を積んでいる若い日本人が大勢います。こうした人たちが世界中で結果や成果を出しているのは、皆さんご存じの通りです。

日本人は世界の中でも間違いなく優秀な民族だと私は確信しています。競争社会に身を投じれば、負けたくない、勝ちたいという気持ちが強くなります。1つの勝負に勝てば、さらに強い相手と勝負したくなります。日本で勝てば、世界の強者に挑戦したいと思うのは何も特別なことではありません。だからスポーツ選手は世界に出ていきます。

ビジネス界においても、同じことができるはずです。日本経済が成長していないのは、海外に飛び出して競争社会に身を投じる人が少ないからなのではないでしょうか。裏を返せば、それは日本のビジネス界が競争社会ではないから。あるいは、ぬるい競争社会だから次への挑戦心が湧いてこないのかもしれません。

アメリカのビジネス界は、スポーツの世界に負けず劣らず厳しい競争社会です。新入社員と社長の年収が100倍違うことなどざらにあります。社長は多くの権限をもち、トップダウンで多くのことを決めることができます。何も変えないトップは無能と評価されます。だからトップによって業績は大きく変わりますし、業績を上げられないトップは即クビです。

企業のオーナーである株主は、給料が安くて無能な経営者よりも、給料が高くてもボーナスがバカ高くても、結果を出す能力の高い人を経営者に選びます。社内にそうした人材がいなければ、外部から呼んできます。自分が所有している株の価格を上げてくれる経営者を選ぶのは、株主として当たり前のことです。

一方、日本の多くの企業は、社内の出世競争は激しいのかもしれませんが、社外との人材競争は少ないように見えます。企業ファミリーの中で、最も活躍した人がトップになり、新入社員から社長までが段階的に連なっているため、給料が100倍違うということもそうはありません。

日本は株主資本主義ではありませんし、真の意味での資本主義社会でもないと思うのです。

藤巻健史「THE21」

 

私が「小さな政府」を支持する理由

私が最低限の税収による「小さな政府」を支持するのは、これまでの日本政府の施策とその結果を見てきたからです。政府に大金を渡しても、ムダづかいするだけで経済成長につながらないことは明らかです。これまでできなかったのだから、これからもできない。そう考えるのが自然なのではないでしょうか。

また、日本人は税金が嫌いなようです。2026年2月に行なわれた衆議院議員選挙において、チームみらいを除く、すべての政党が消費税減税を公約に掲げました。それがなぜかと言えば、選挙に勝てるからでしょう。減税を声高に叫ぶと票が集まるからです。

ポピュリズムに走り、確固たる政治信念のない政治家と政党ばかりなのは非常に残念ですが、そうした政治状況を生んでいるのは私たち国民であることも間違いありません。

税金を払いたくないのであれば、高い社会保障を受けたいなどと思わないことです。税金は払いたくない、社会保障は手厚くしてほしい。そんな都合の良い話はありません。

最低限の税収で最低限の社会保障の小さな政府が良いと思うのか、逆に、高い税収で高い社会保障が受けられる大きな政府が良いと思うのか、国民的議論がなされ、支持の多いほうが政権を担い、国家運営を行なっていく。これが世界の常識です。

しかし日本では、こうした議論が成立しません。自由民主党は、消費税減税と「責任ある積極財政」を公約に掲げましたが、両方を一度に実現することはできません。できないことを公約に掲げ、さもできたかのように帳尻合わせをする。だから世界の借金王になってしまったのです。

健康保険もそうです。日本の健康保険は、本来の保険ではなく、所得分配装置です。本来の保険は、収入に関係なく同じ保険料を支払います。実際、自動車保険や火災保険は、収入によって保険料が異なることはありません。

アメリカの健康保険は、年収に関係なく自分が選んだ補償内容に応じた保険料を支払います。手厚い補償を選べば、年収がゼロであろうと高い保険料を払わなければなりません。それが保険です。

日本の健康保険制度は、資本主義をフル回転させ、国力がグングン伸びているときにのみ持続可能な制度です。これだけ国力が落ちた日本では持続不可能になっています。稼げない国は、皆平等に貧しくなっていくのが世界の常識であり、皆が手厚い医療を受けられる制度が持続可能なわけがありません。

こうした発言をすると、「人道主義に反する」と言われるのですが、国家といえども金がなければ何もできません。倫理観だけで国家運営はできないのです。税金を払いたくないのであれば、小さな政府を選べばいい。税金が嫌いな人が多く、政府もお金の使い方が下手くそなのですから、日本にぴったりだと思うのですが、いかがでしょうか。

 

Xデーに備えよ!できることはまだまだある

最後に述べておきたいのは、日本人は勤勉で、まじめで、努力家で、世界に誇れる非常に優秀な民族だということです。資源が何もない日本がこれまで世界と伍してきたのは、ひとえに「人」のおかげです。人こそが日本のパワーの源泉です。

日本人が最大限に活きる、きちんとした社会の仕組みをつくり、真の資本主義国家となれば、日本は必ず復活できます。

Xデーが来ることは避けられず、Xデー後の4~5年間は、終戦後と同様、私たち国民はとても苦しい生活を強いられることになるでしょう。それは仕方がない。世界の借金王になるほど、赤字を垂れ流し続けてきてしまったのですから。

そして、そうした艱難辛苦を乗り越えるために政府は何もしてはくれません。1ドル150円台は、私に言わせれば円安ではなく、まだ円高です。日本経済が好調だった1980年前後、1ドルは250円でした。まだ円高のうちに、保険に入るつもりで資産防衛策を講じるなど、私たちにはXデーに備える時間がまだ残されています。

勉強し、知識を得て、様々な対策を講じておく。英語を身につけ、外資系企業に転職し、世界基準の仕事ができるようにしておく。日本の常識にとらわれることなく、世界の常識を知る努力も必要かもしれません。できることは色々あります。自分と自分の家族を守る方法を自分なりに考えてみてください。

苦境の時期に、真の資本主義国家を目指す青写真を描き、そのための体制をきちんと整え、着実に前に進むことが日本にとって重要になります。終戦後と同様、「今日より明日のほうが良くなる」と思えれば、人間は生きていけます。日本人は優秀なのだから大丈夫。絶対に復活できる。そう信じて千辛万苦の時代を生き抜いていきましょう。それができれば、日本は必ずや力強く復活します。

藤巻健史「THE21」

プロフィール

藤巻健史(ふじまき・たけし)

元米モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)在日代表兼東京支店長,前参議院議員(2期)

1950年、東京生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。米国ケロッグスクールへ社費留学(MBA)、ロンドン支店等を経て米モルガン銀行に転職。在日代表兼東京支店長。その後、ジョージソロスのアドバイザー等を経て参議院議員2期。一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院で6年間非常勤講師。日本金融学会所属。

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