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サッカー推しで80代が「恋する乙女」に 精神科医が語る若返りの秘訣

和田秀樹(精神科医)

和田秀樹氏「60代~」

定年も近づき、徐々にイベントが減ってくる60歳という年齢。そんななかでも張りのある生活を送るためには、なにを心がければよいのか。和田秀樹氏の著書『60歳で離れる人、60歳からつきあう人』(PHP研究所)より解説する。

※本稿は、和田秀樹著『60歳で離れる人、60歳からつきあう人』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「推し」への愛が仲間をつくる

最近は、アイドルやアーティスト、スポーツ選手など、自分の「推し」を応援する「推し活」に励む人が増えています。実はこの「推し活」、高齢になってからの人間関係づくりや、毎日の楽しみを見つける上でもお勧めです。「推し」がいると、その存在を通じて、同じ趣味や価値観を持つ人たちと自然につながることができます。

最近では、SNSを通じてファン同士がつながり、初対面なのに一緒にライブやイベントに参加する人も少なくありません。「同じ人を応援している」というだけで初対面でも打ち解けやすく、会話も盛り上がりやすくなるようです。

また、たとえ日常生活で孤独感や疎外感を感じていたとしても、推し活にはそれを和らげる効果があります。日常生活で誰かと直接会うことが少なくなっても、SNSで気持ちを発信したり共感し合ったりすることで、「自分はひとりじゃない」「仲間がいる」と感じられるようになるからです。

さらに、推し活には年齢や性別、職業といった垣根を越えた交流が生まれやすいというメリットもあります。普段なら出会えないような人たちと、「推し」という共通の話題を通して仲良くなれるのです。

そもそも、誰かにときめくドキドキ感や高揚感というのは、いくつになっても欠かせないものです。ときめきやドキドキ感は男性ホルモンの分泌を活性化させ、脳の前頭葉にもよい刺激を与えることがわかっていますが、「誰かを応援する」「夢中になれるものがある」という状態が脳の活性化を促し、心身の健康につながります。

たとえば、サッカー選手の推し活をしているうちに「恋する乙女」のように若々しくなった80代の女性など、実際に推しがいることで若さを保っている方もたくさんいらっしゃいます。

「好きなアーティストのコンサートに行くことが、何よりの幸せ」「推しの姿を見ているだけで元気が湧いてくる」といった体験が、実際に高齢者の活力や意欲の向上につながることもあります。

高齢者だけでなく、「生きる気力がない」と塞ぎ込んでいた人が、アイドルの推し活を始めた途端にみるみる活力を回復することもあります。推しの存在が、どんな治療や薬よりも効くことがあるのです。

その反対に、「人にどう思われるか」を気にして「好き」という感情に強い抑制をかけていると、人はどんどん老け込んでいきます。他人の目を気にしすぎず、自由に自分の感情を表現することが老け込まないコツといえるでしょう。

 

幸せのカギは「アホになれる力」

関西では「アホになる」という表現がありますが、この「アホになれる瞬間」というのは人間にとって非常に大切です。たとえば、ふだんはインテリで冷静な人が、地元のサッカーチームを応援するときだけは、ユニフォームを着て子どものように夢中になって大声で応援している。人目なんて気にせず、思いきり「アホになれる」――そんな時間を持つことは、けっして悪いことではありません。

最近は大谷翔平選手がホームランを打っただけで、その日一日ご機嫌になる人も多いですよね。どう考えても、機嫌が悪いよりは機嫌が良いほうが精神的にもいいでしょう。ですから、推し活に限らず、「これをやっていると楽しい」「これがあると幸せ」というものがひとつでもあればいいわけです。

その対象が人間である必要もありません。ペットに夢中な人もいれば、スイーツを食べているときがとにかく幸せという人がいてもいいのです。ただし、そういう幸せを阻むものがあります。前にも触れた「人間関係至上主義」です。

たとえば、スイーツは美味しいけれども、「ひとりで食べている自分はかわいそう」とか「恋人と一緒だったら、もっと幸せなのに」と考えてしまう。「誰かと一緒じゃないと、幸せではない」という考え方です。

私はそうは思いません。ひとりでスイーツを食べたって、美味しければそれで十分じゃないですか。周りが勝手に「あの人、ひとりで食べていてかわいそう」などと言うのも余計なお世話です。むしろひとりだからこそ、誰にも気を使わずに、自由に楽しめることもたくさんあります。

基本的に「誰かと一緒じゃなきゃダメ」という価値観を刷り込まれている人も少なくありませんが、そんなふうに思う必要はありません。自分が感じた美味しさや楽しさは素直に味わったらいいし、自分の好きなことをして幸せな気分になること自体が重要なのです。

さらに、そこで同じ思いを持つ人とつながれたら、よりいっそう幸せが広がっていくでしょう(もちろん、ひとりでじっくり味わってもいいわけです)。いちばん大切なのは、自分の今の感情に素直になることです。それが結果として、誰かとのつながりを生むこともありますし、逆に「ひとりの時間」が心地いいと思うなら、それでもいい。

そうした自分の心地よさを大事にすることが、人間関係のあり方を見直すきっかけにもなるのです。

プロフィール

和田秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、立命館大学生命科学部特任教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長。著書に、『医学部にとにかく受かるための「要領」がわかる本』(PHP研究所)、『老いの品格』『頭がいい人、悪い人の健康法』(以上、PHP新書)、『50歳からの「脳のトリセツ」』(PHPビジネス新書)、『感情的にならない本』『[新版]「がまん」するから老化する』(以上、PHP文庫)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『自分は自分 人は人』(知的生きかた文庫)など多数。

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