
株と不動産で数億円の富を築き、「投資のプロ」を自認する杉村太蔵氏。「長期的視点で見て日本は第2次高度経済成長期に入り、日経平均8万円超もありうる」と予測する同氏に、今後の投資をどのように考えたらよいかを聞いた。(取材・構成:坂田博史)
※本稿は、『THE21』2026年4月号第1特集[仕事と投資に役立つ! 経済ニュースの読み方]より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
※前後編の前編です。
※本稿は2026年3月時点の情報に基づき、投資に対する著者の考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入を含む投資の判断はご自身の責任で行なうようお願いいたします。
――『杉村太蔵の推し株「骨太」投資術』を上梓されました。なぜ今、株式投資の指南書を出されたのでしょうか。
【杉村】理由の一つは、今が投資に最適の時期だと考えているからです。これは私だけではありません。今年の大発会で片山さつき財務大臣は、「投資は今年から」と述べました。実際、今年に入ってから日経平均株価は最高値を更新し続けています。
現在が投資に最適な時期であることは、戦後の日本経済を振り返ってみると見えてきます。まず戦後の焼け野原からの復興期があり、それから高度経済成長期に入り、安定成長期へと移行しました。そしてバブル期、バブル崩壊期を経て、2001年から小泉純一郎政権の改革期、13年から安倍晋三政権のデフレ脱却期と続いてきました。
現在が何期かと言えば、「第2次高度経済成長期」です。新型コロナウイルスのパンデミックがほぼ収束した22年から日本経済は再び高度経済成長期に突入した、と私は見ています。大事なことは、長期的視点で日本経済の現在地を把握することだと思います。
――日本が再び経済成長期に入ったと言われても、にわかには信じがたいのですが......。
【杉村】多くの人はそうかもしれませんね。戦後の高度経済成長期のときも、日本が世界第2位の経済大国になると思った人は、ほとんどいなかったのではないでしょうか。
もう一つ、長期的視点から言うと、日本には「40年周期説」という考えがあります。幕末の混乱期である1865年がボトムで、そこから40年かけて上昇し、日露戦争で勝利した1905年がトップ。そこから40年下降して太平洋戦争に敗北した45年がボトム。そこから40年上昇して高度経済成長を成し遂げた85年がトップ。そこから低迷が始まり、40年後の2025年がボトムだとすると、今年から40年、日本は上昇し続けることになります。
日経平均株価は5万円を超えましたが、私は8万円以上になる可能性が十分にあると考えています。
――日経平均が8万円になると考える根拠を教えていただけますか。
【杉村】一つは、GDP(国内総生産)の大幅成長が見込めるからです。石破茂前総理は「2040年に名目GDP1000兆円」を目標に掲げました(24年時点の名目GDPは609.5兆円)。これは単なるお題目ではなく、政府の成長戦略や政策文書に裏づけられた数字です。
経済財政諮問会議の議論から日本経済の現在地が学べ、「骨太の方針」を読めば未来を知ることができます。これらを見続けていると政権が代わっても、政策の大きな流れは変わらないことがわかります。
なぜかと言うと、政策やその素案をつくるのは官僚であり、官僚に選挙はありません。また、経済財政諮問会議のメンバーの4割以上は民間人であり、民間人が色々な提案をしています。だから大きな方向性は変わらないのです。
そして、政府が目標を掲げれば、その実現に向けて進んでいくことは間違いありません。GDPが1000兆円になるなら、日本の大企業が成長しないということはあり得ないでしょう。
――他にも根拠がありそうですね。ぜひ、教えてください。
【杉村】上場、非上場合わせた金融・保険業を除く日本企業全体の当期純利益は、2000年頃には10兆円前後だったのが、近年80兆円を超えています。「失われた30年」と言われつつも、日本企業の利益は約8倍に増えているのです。
23年度末時点の企業の内部留保の総額は約600兆円。そのうち現預金が約300兆円もあります。日本企業の財務体質は過去最強と言っても過言ではありません。こうした資金の何割かが投資に向かい、配当や自社株買いに使われたとしたらどうなるでしょうか。日本経済と日経平均を押し上げるのは明白です。
――なるほど。日本企業の内部留保が投資や配当に回れば、株価はさらに上がりそうです。
【杉村】その一方で、法人税の税収は、約10兆~12兆円だったのが、14兆~19兆円とわずかな増加にとどまっています。税収で増えているのは消費税収で、約10兆円から約25兆円に増えています。私たちの所得はというと、ほぼ横ばい。実質賃金はむしろ下がっている。
これが何を意味するのか。私が衆議院議員だった20年前によく聞いた言葉に「トリクルダウン」がありました。まず大企業が儲かり、その富が中小企業や地方、私たち個人にまで滴り落ちてくるという考えがトリクルダウンです。
しかし、ご存じの通り、トリクルダウンは起きませんでした。大企業が内部留保として富を溜め込んでしまったからです。
これを見て、政府が導入したのが「新NISA」です。株式の売却益や配当金を非課税にすることで、トリクルダウンを実現しようと考えたのだと思います。
日本企業は今後も利益を上げ続けるでしょう。その利益が配当として私たちに滴り落ちてきます。新NISAを使えば配当は非課税で積み上がります。こうした新NISAのメリットを享受しようとする人が急増。24年時点でNISA口座はすでに2500万口座を突破しました。
日本の個人金融資産は約2200兆円あり、その半分、約1100兆円は現預金です。この何割かが新NISA口座を通して株式投資に回るのは確実で、これもまた日経平均を押し上げます。
「GDP1000兆円」「企業の内部留保が投資や配当へ回る」「新NISAで個人投資が激増」という三つが、日経平均が8万円超になる根拠になります。
――日本はこれから、ますます人口が減少し、超高齢社会になります。AIなどのテクノロジー開発でもアメリカや中国に後れをとっています。なかなか明るい未来を想像できない人も多いと思います。
【杉村】そういう人にこそ、経済財政諮問会議の議論や骨太の方針を読んでもらいたいですね。政府がこれから何をやろうとしているのかをまず理解する。すると日本もまだまだ捨てたもんじゃないと思えるんじゃないかな。もちろん、政府の言うことは信用できないという人もいると思いますけど。
大事なことは、印象や雰囲気だけでなく、客観的なデータや事実をきちんと見て、理解して、それから判断することではないでしょうか。
人口減少で人手不足、労働力不足になるのも、見方を変えれば、それを補うためにAIやロボットなどを積極的に活用できる環境があるということ。どの国よりも「伸びしろ」があると言うこともできます。
AIに限らず、日本は昔から「0to1」はあまり得意ではありません。日本の基幹産業となっている自動車も日本が発明したわけではありません。日本が得意なのは、改良に改良を重ねて社会実装すること。コストを下げたり、燃費を良くしたり、走行距離を延ばしたり、環境性能を向上させたりするのが得意。だから0to1はアメリカや中国など外国に任せて、その後の社会実装で儲ければいい。私たち日本人はずっとそうしてきたではありませんか。
これは何も私が言っているわけではなく、政府がこうした方向で動いているのです。資産運用をするのなら、政府の方針や政策などを把握しておいたほうがいいと思います。政治がこれからの日本をつくるわけですから。
三権分立は、実は時間軸で分かれていて、司法は過去、行政は現在、政治は未来を担当する。資産運用はこれから未来がどうなるかが大事なので政治を見ることが大切なのです。

更新:03月21日 00:05