
「起業はけっしてギャンブルではない」と語るのは、新規事業構築を得意とする起業家の中村裕昭氏。自分の好きなことで稼げたら。好きな時に好きな場所で働けたら。そんな願望を叶えてくれる起業は、もはや一部の野心家だけのものではない。では、「普通の人」が起業で失敗しないために必要なこととは何か。かつては「商売下手だった」と振り返る中村氏が、臆病な人こそ知っておくべき「心の持ち方」を解説する。
※本稿は、中村裕昭著『臆病者のための起業法』(総合法令出版)より一部抜粋・編集したものです。
昔は、世の中の大多数の人が同じ方向を向いていました。誰もがカラーテレビを欲しがり、クーラーを欲しがり、車を欲しがっていたように、欲しいもの、売れるものがはっきりとしていて共通していました。売る側は、欧米の真似をしていればよく、あまりよく考えなくても商売ができました。
でも今は、社会で共通する「欲しいもの」がありません。エアコンはあって当たり前、車もテレビも需要が落ち込んでいます。「所有から共有への価値観の変化」といったことも言われますし、趣味も人それぞれになっています。スマートフォンとSNSの普及により、情報の流通速度が加速し、さらに細分化されるようになりました。
そんな時代では、誰が何を欲しがっているのかなんてわかりません。もう、あちこちにベクトルが飛び散っているわけです。
僕たちはその一個一個のベクトルを拾い、高速で分析して可能性の選択肢を増やし、なるべく多くさまざまな試みをすることが、これからの絶対的成功法則だと思うのです。
ベクトルがあちこちに飛び散っているからこそ、僕たちにもチャンスがあるのです。なぜなら、誰もが驚くようなホームランは難しいとしても、ベクトルを1個でもキャッチできれば小さなヒットは打つことができるからです。
一つひとつの行動に対する結果はさまざまです。うまくいくこともあれば、そうでないときもあります。でも、それでいいんです。結果がよかろうが悪かろうが、同じ価値です。打つ手がハマればラッキー、外したとしても、「これはダメだった」というデータを得られるわけです。結果がわかればまた次を試せばいい。それだけです。
起業に成功する人に共通点があるとすれば、ポジティブなことです。
性格が明るいとか暗いとか、そういうことではなくて、目の前の事実を必要以上にネガティブに考えずに受け止められることは、データを扱う上で大切な素養なのです。
売り上げが下がったからといって感情まで落ち込ませてしまうと、次の手が打てなくなります。感情に支配されず、できる限り冷静に事実を事実として受け止める意識が必要です。目の前の出来事に一喜一憂してはいけません。
テストを重ねていくことで、「間違いのない事実」が積み上がっていきます。一つひとつの行動は、決して難しいことでもなければ、怖い結果をもたらすものでもありません。まずは行動。それだけで未来がひろがります。
ほとんどの人は人生を一気に大逆転させようとしても、ちょっと無理です。今から大企業の社長になったり、歌手になってミリオンセラーを出すのも現実的ではないでしょう。野球を始めてメジャーリーグで活躍するには、さすがに遅過ぎます。
一流と呼ばれる彼らは、昔からずっと必死に努力をしています。今の自分をさらに高めることで、圧倒的なスピードで成長を続けています。だからこそトップでいられるのです。そこに今から追いつこうとしても、難しいのが現実です。
このことを理解せずに大き過ぎる夢を見てしまうと、現実とのギャップを感じて、精神的にしんどくなってしまいます。
しかし、誰もが知るような大金持ちにはなれなくても、自分と家族と、あともう少しの人を幸せにする程度の成功は、誰にでもできます。これは間違いなく言えます。
大金持ちになりたい、有名になりたいという気持ちはあっていい。それがモチベーションになることもあります。でも、その願いは一旦置いてください。
例えば月に100万円を狙うとします。達成するのは大変です。まずは目先の5万円、10万円から考えましょう。逆に言うと、それができれば後は比較的楽に売り上げが上がっていきます。気負い過ぎると続きません。最初は「損しなければいいや」くらいの気持ちで十分です。
ただし、行動が遅れるのはいけません。物事は決めたらすぐに動かなければいけないのです。よくも悪くも、行動した人しか結果を手にすることはできないのです。
更新:11月14日 00:05