2025年09月18日 公開
2025年09月18日 更新

東京・赤坂の「スナックひきだし」は、キャリアに悩むミドル世代が昼間に集う場。数多くの転職や転身を見守ってきた"ママ"こと木下紫乃氏に、納得できるセカンドキャリアを見つけるための心得を聞いた。
前編では挑戦に向けた心構えを紹介したが、後編となる本稿では「会社との距離感の見直し」や「これまでの経験をどう活かすか」といった、今の職場にとどまりながらもキャリアを充実させるための考え方を語ってもらう。
※本稿は前後編の後編です。『THE21』2024年10月号の掲載記事より、内容を抜粋・編集しています。

ミドルが感じているモヤモヤを晴らす手段は転職だけではありません。今の会社に大きな問題がないのなら、そのままそこで働き続けるのも選択肢の一つです。
そのためには、会社と自分の関係性を見直し、今の自分に求められていることを理解し直すことが不可欠。会社への不満は、「自分が会社に期待すること」と「自分が会社から期待されていること」の不一致から生まれていることも多いのです。
歳を重ねるにつれ、周囲からの「期待」は若手のほうへ、否応なく移っていきます。これはポジションの上下とはまた別の話です。また、ミドル世代ともなると、体力も気力もピークは過ぎているでしょう。
それなのに、会社からの変わらぬ期待を背負いたいと思ったり、若手時代同様の野心を抱えたりと、仕事に対する姿勢を変えようとしない方が、想像以上に多いように思います。仕事に前向きなのはいいのですが、そのままではどうしても気持ちが落ちますし、もしそこで不貞腐れると「扱いにくいベテラン」と思われてしまう可能性も大いにあります。ミドル以降は、自分と会社の距離感を見直し、適度な緩さや諦念を持って会社とつき合うほうがいいのです。
とはいえ、当然単なるフリーライドではいけません。それでは自分の将来にもつながりませんし、周囲の目も厳しくなります。会社の看板を上手に使って人脈を広げるなど、会社というハコに留まることで得られる恩恵はしっかり享受しつつ、それに対してきちんと恩返しすることができればいい。
後輩を押しのけようとするのではなく、彼らを支え、導き、業務をコントロールし、彼らのお手本となるように働く。それこそ、会社がベテラン社員に求めることです。そのことに気づき、それを遂行することが、会社に残って気分良く働くためのコツと言えます。
こうした「マインドの切り替え」がうまくいっていない方によくあるのが、会社への不満を抱えているのに、ただ愚痴を言うばかりで変えようとしない、という事例です。
時には「いや、その役職に就いているなら、そのくらい変えられるんじゃないの」と思ってしまうような話を聞くこともあります。地位や年齢が上がっても、素直で従順な「若手マインド」のまま仕事をしてしまっている──自分がそうなっていないか、念のためチェックしておいたほうがいいでしょう。

誰であれ、キャリアは想定通りにいかないことばかりです。新人の頃からずっと、皆さんのキャリアは、実は運や偶然に結構左右されてきていませんか?
しかし、どんな経験からも必ず、学べることがあるんです。自分のキャリアに「納得感」を持つためには、これまでの経験でどんな学びを得てきたのか、洗い出すことは大事。そもそも過去は変えられないわけで、それならポジティブに捉えるほうが、ずっと生産的でしょう。
そのためには、立派な経験はもちろん、つらかった経験や腹が立った経験まで、自分の過去を第三者がいる場で話題にすることが大切です。私はこれを「お焚き上げ」と呼んでいます。
そういう場で、ネガティブなものも含め、これまでの経験から何を得てきたのかを再確認することが、過去の経験がしっかり活きるセカンドキャリアにつながるのです。
最後になりますが、皆さんぜひ「自分のことだけをゆったり考える時間」を取ってください。日本のミドル世代は、働きすぎ、背負い込みすぎです。言い換えれば自分のことを考えなさすぎ。仕事も大事でしょうが、経営層でもない限り、別にそこは「あなたの会社」ではありません。
ゆったりと湯船につかったり、ふかふかの布団に寝そべったりしながら、ゆっくり「自分のこと」について考える時間を、まずは取っていただきたいと思います。

更新:09月23日 00:05