
「言いたいことを言葉にする」のは容易ではありません。多くのリーダーが以下のような課題を抱えています。
・指示があいまい:わかりづらいから人が思ったように動かない
・考えがまとまらない:要領を得ないから相手に伝わらない
・話の内容がフワっとしている:説得力がないから相手に刺さらない
このような課題を解決するために、数々のビジネスリーダーを育成してきたグロービスが「言いたいことを、瞬時に伝わる言葉に変換する25のトレーニング」を紹介します。本稿は「部下への期待を言語化する」レッスンです。
※本稿は、グロービス,嶋田毅著『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです

マネジャーの役割の大きなものに、部下や後輩の動機づけがあります。
動機づけの方法には、報酬を与えたり承認欲求を満たしたり、チャレンジしがいのある仕事を任せたり、あるいは職場環境を魅力あるものにするなど、さまざまなものがあります。
その中でも有効なものの一つに、部下の成長の支援に真摯に向き合うというものがあります。彼/彼女のキャリア設計や関心、得手不得手などに関心を持ちつつ、適切なアドバイスやフィードバックを提供するなど、良いコミュニケーションをしっかり行うことができれば、彼らのモチベーションは自ずと高まっていきます。
そうしたコミュニケーションの一環として「期待を伝える」という方法があります。人間なら誰しも、上司から高い期待をかけられることは嬉しいものです。
まず、上司から認められ信頼されているということですから、承認欲求も満たされ、自己効力感が高まります。
また、高い目標を与えられれば、将来的に明るいキャリアにつながる可能性が増しますから、これも当事者意識や責任感を高めます。
期待を伝える際には、明確かつ具体的な目標を設定し、それをわかりやすく伝えることが重要です。たとえば、「営業チームリーダーとして昨対比15%増の売上目標を達成してほしい」などです。
その達成のために必要な行動案についても、実現可能性を考慮し、具体的に説明するといいでしょう。「チームとして毎週新規顧客に対するアプローチを5件増やしてほしい。自社製品の魅力を効果的に伝えるプレゼンテーションスキルをチームのメンバーに伝授してほしい」などです。
さらに、そうした目標達成を通じて相手が得られる能力などを示します。「チームをマネジメントする力や、業務効率化のスキルが身につくはずだ」などです。
また、自分が提供できる支援についても触れるとよいでしょう。
いったん「高い期待→モチベーション向上→良い成果→さらに高い期待...」の好循環が回ると、部下のスキルやエンゲージメントが高まるだけではなく、上司に対する信頼も増していきます。
この好循環を回すためにも、図3─3に示したポイントを意識しながら期待を伝えることが大切なのです。
■設定
あなたはある会社の営業部長。1年前に営業第1課の課長に昇進したAさんに、営業プロセス標準化のプロジェクトリーダーをお願いしたいと考えています。
Aさんは物事を緻密に考えることを得意としており、また若くて頭も柔軟であることから、このプロジェクトリーダーには適任だと考えています。プロジェクトの目的を明確にしつつ、Aさんに動機づけるような説明をしてください。
■回答例・解説
まずは言葉が足りない例から見てみましょう。
[NG例]
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Aさん。今日はAさんの力を見込んで、新しい仕事をお願いしたい。営業プロセス標準化プロジェクトのリーダーだ。
Aさんは将来、この会社で経営陣への道を歩むことになるだろう。ここで成果を残すことができれば、大いに評価されるはずだ。ぜひお願いしたいのだがどうだろうか?
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期待や得られるメリットは伝わるのですが、具体性に乏しく、何をしていいのかわからないため、Aさんも戸惑うのではないでしょうか。
そこで、具体性を大幅に増しつつ、支援の表明などを加えてみました。
[OK例]
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Aさん。課長の仕事もずいぶん板についてきたね。努力家のAさんの成長は本当に頼もしいよ。今後もぜひこのペースで頑張ってほしい。
ところで、今日はAさんの力を見込んで、新しい仕事をお願いしたい。営業プロセス標準化プロジェクトのリーダーだ。
Aさんも気づいていると思うけれど、うちの会社の営業は属人的なやり方がまだ多い。そのため、引き継ぎのたびにお客さんから「御社の営業はやり方がバラバラですね」と言われたりすることも多い。営業担当者によって時間の使い方などもバラバラで、無駄が多いと感じている。
これでは再現性が担保できないし、新人の教育なども非効率になる。
今回のプロジェクトは、顧客体験を高いレベルで揃えて顧客満足度を上げるとともに、長期的な顧客関係維持ができるよう、部全体の業務プロセスの標準化を行い、同時にその底上げを図ることが目的だ。
できる営業担当者の動きを参考に、プロセスを極力言語化・可視化し、2年後にはできれば50%は営業の生産性を上げたいと考えている。
詳細については今後議論しながらつめていこうと思っているが、まず到達地点についていえばそんなところかな。
荷が重いと感じるかもしれないけれど、この仕事には緻密な思考力と柔軟な発想が必要だ。また、課長職以上のリーダーシップも必要になる。Aさんならその点、心配がない。少なくとも自分は過去の経験からも、Aさんの下でプロジェクトが成功することを確信している。
Aさんは将来、営業という仕事に閉じず、この会社でマネジメントの道を歩むことになるだろう。このプロジェクトを通じて成果を残すことができれば、単に評価されるだけではなく、リーダーシップスキルをさらに磨くことにもつながる。Aさんの未来はより明るいものになるはずだ。
何かあったらサポートするから、ぜひ一緒に頑張っていこう。
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Aさんにどのような成果を期待しているかを具体的に伝えるとともに、Aさんを強く見込んでいることやAさんが適任である理由、そしてAさんの将来のためにもなることなどを盛り込んでいます。自分自身もサポートすることを伝えている点も、信頼を得るうえで効果的でしょう。
■設定
あなたはある会社の人事部長。他部署から異動してきたBさんに新卒採用の仕事をアサインする予定です。優秀な学生の獲得が難しくなる中、Bさんへの期待は大きいものがあります。Bさんは人当たりがよく、コミュニケーションに長けています。また、気配りができる点も強みです。
Bさんに、3つ程度のポイントにフォーカスして期待を伝えたいと考えています。
■回答例・解説
このケースでは、Bさんも認識しているであろう強みを活かした期待を2つ、新たな挑戦となる期待を1つ示してみました。相手の能力を認めつつ、さらに成長してもらいたいとの思いを込めています。
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Bさん。採用チームでは、昨年以上の採用実績を残すことを目指しています。Bさんには、同僚と相談しながら、その一端を担ってほしいと考えています。
Bさんには特に3つのことを期待します。
第一に、Bさん自身の魅力を活かし、話を聞きに来た学生たちが「Bさんのいる会社でなら働きたい」と思ってもらえるよう意識しながら活動してください。また、大学の就職課との関係強化も重要です。ぜひ当社の良さをしっかり伝えてください。
また、内定学生や内々定学生に対するきめ細やかなフォローアップも期待しています。何か違和感を抱いたらスピーディに報告・行動してください。100%が入社という訳にはいかないでしょうが、昨年の歩留まりの40%は越えたいと思っています。Bさんの気配り力や観察力を存分に発揮してください。
最後に、新しい挑戦として、来年以降の採用戦略の企画・実行にも携わってもらうつもりです。これまでとは異なる採用アプローチ、たとえば動画系SNSの活用など、新しい発想も期待しています。今年から、仮説を持ちながら、リスクは十分に意識したうえで実験やリサーチなども始めてください。
幸い、採用チームは良い人ばかりです。目標は高いけれど、だからこそそれをやりがいとして感じて創意工夫してもらえると嬉しいです。
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Bさんの強みや将来性を踏まえて、実現可能性を意識し、具体的なイメージが湧きやすい工夫なども入れて言語化しています。Bさんも前向きに取り組めるのではないでしょうか。
■コツ・注意点
通常、過去の部下の成功や強みをしっかりコメントしてあげると納得感も高まります。逆にいえば、唐突感を感じさせるような言い方は好ましくありません。常日頃から部下を観察したりコミュニケーションしておくことで、彼/彼女の特性や期待を認識しておくことが大切です。
先述の演習では描き切れていませんが、部下が意見を自由に言えるように、オープンで双方向のコミュニケーションを意識することも大事です。
【グロービス】
グロービスは1992年の設立以来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。
「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびにオウンドメディア「GLOBIS 学び放題×知見録」により、これを推進しています。
さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。
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更新:06月20日 00:05