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なぜメールの即レスはいけないのか...世界で加速する「境界線を引く働き方」

2025年05月05日 公開

河原千賀(アメリカ在住ジャーナリスト)

一人の時間

見た瞬間に「返信しなきゃ!」と焦燥感に駆られる、メールやSNSの通知。しかし、その「即レス」という習慣が、あなたの心身を蝕んでいるかもしれない。本稿では、アメリカ在住のジャーナリスト・河原千賀氏が、現代人が実践すべき「境界線を引く働き方」について、「つながらない権利」法制化の動きから考える。

※本稿は『グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか』(PHPビジネス新書)より抜粋・編集を加えたものです。

 

メールやSNSに「即レス」してはいけない

メールやSNSに即、返信してはいけない。

そもそも、メールやSNSを頻繁にチェックしてしまう理由のひとつには、「返事はすぐにしなくてはいけない」という固定観念があるからだ。そんな緊張が続けば、自律神経が乱れて心身ともに疲れてしまう。集中力も続かず、不安や憂鬱を引き起こす原因にもなる。

即レスするなと言ったところで、「無理を言うな」と反論されるのがオチである。

そこで、「石、小石、砂」の話をしよう。これは、ビジネスのタイムマネージメントでよく使われる、架空の大学教授によるデモンストレーションである。

ガラスの瓶の中に石を入れていく。学生たちに「瓶はいっぱいですか?」と尋ねると、学生は「はい、いっぱいです」と答える。

次に、小石を同じ瓶に入れていく。瓶を少し振ると石と石の間に隙間ができて、小石はコロコロと瓶に収まっていく。「瓶はいっぱいですか?」「はい、いっぱいです」。

最後に、砂を入れる。瓶を振れば、隙間ができて砂はサラサラと瓶に流れる。別の瓶を用意して今度は、順番を反対にする。まず砂から、続いて小石、石と入れていく......が、砂の段階で瓶がいっぱいになる。

イメージできただろうか?

瓶は「あなたの人生」、石は、「あなたの人生で大切なこと(健康、家族、友だち)」。小石は「しなくてはいけないこと(学校や仕事)」。そして、砂は「そのほかのこと」だ。

企業の研修などでは、「やるべきことを最初にやりなさい」と教えられる。しかし優先順位がハッキリしていたら、小石すなわち「しなくてはいけないこと」は、ちょっと後になっても良いのだ。

むろん、砂すなわち「そのほかのこと」を優先するということではない。大切なのは、あなたの石は何かを知ることだ。あなたがビジネスパーソンなら、

「私のするべきメインの仕事は何なのか」
「具体的に何を達成すればいいのか」
「いつまでに終えるのか」

を明確にして、石、小石、砂を決めていこう。

 

「おかしい」と思う要求に境界線を引け!

「やるべきことを後回しにしていいのか?」と不安になっても、心配はいらない。たとえ優先順位が後になっても、しっかりとその仕事を完成させれば、信頼を失わずに済む。

もし、何もかも即座に対応することを求められる立場だとしたら、その状況を生み出した側にむしろ問題があるのだ、と考えても良いくらいだ。

ここで、ちょっと恥ずかしい、私の経験話をさせてほしい。

私は、日本の学校ではいわゆる体育会の部活動に所属していたので、「なんでも即実行」というメンタリティを叩き込まれてきた。30分前行動は当たり前。先輩がグラウンドに来る前に掃除をするのも自分の役割だと思っていた。

しかしアメリカで不動産業に就き、物件をご案内する際、お客様より先にドアの鍵を開けようと小走りすると、「そんなに急がなくてもいいよ!」と笑われたことがしばしばあった。ある社会では当たり前なことも、環境が変わればじつはおかしく見える、と気づくのにしばらくかかった。

カリフォルニア州議会でも、「Right to Disconnect(つながらない権利)」の法制化を目指す法案(AB2751)が、2024年2月に提出された。

「労働者が勤務時間外には仕事のメールや電話などへの対応を拒否できる権利」で、法律化されれば、違反した雇用者には罰金が課されることになる。フランスをはじめ13カ国ですでに制定されており、今後この流れが世界でも加速していくと思われる。

リモートワークの普及により、仕事と家庭生活の境界を曖昧にしてしまう欠点が生じてしまう。終業後にもかかわらず、上司から急に電話がかかってきてストレスに感じる若手社員も少なくない。そういったことにも堂々と「ノー」を言える権利が認められてきたわけだ。

企業や雇用者の無理な要求を受け入れ続けるのではなく、おかしいと思う要求に対して、一人ひとりがしっかり自分の境界線を引く。こうした姿勢を見せ続ければ、組織は必ず変わる。

 

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