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これを読まずに組織は語れない 50年以上読み続けられるベストセラー『タテ社会の人間関係』【書評】

2026年04月30日 公開

大村壮太(作家)

書籍紹介

日々、多忙なビジネスパーソン。限られた時間の中で、いかに効率良く知識や教養を身につけるかは、常に頭を悩ませる問題だろう。本連載では、そんな悩みを抱えるビジネスパーソンに、スキル向上に役立つ書籍を厳選してご紹介する。今回は、中根千枝著『タテ社会の人間関係』(講談社)を取り上げる。

 

『タテ社会の人間関係』

日本の組織文化を論じるうえで欠かせないキーワードが、"タテ社会"だ。

文化人類学者の中根千枝は、50年以上も前にこの概念を提唱し、「日本社会は"場"の共有によって集団を形成し、その内部で絶対的な"タテ"の序列が生まれる」と指摘した。本書は、その後の日本文化論やビジネス書で繰り返し参照されてきた金字塔である。

まず本書が強調するのは、企業や学校といった"場"への所属が、個人のアイデンティティの中心を形成するという点だ。

たとえば「○○大学出身」「○○商事の社員」といった肩書は、海外のような専門職能や資格よりも強い意味を持つ。

こうした"場"主導の結合は、集団内部に強い一体感を醸成する一方で、外部に対して排他的になりやすいという特徴がある。ビジネスシーンでも社外との連携より社内の論理を優先したり、他者の進言を「ヨソ者」として退けたりする場面は珍しくない。これらは、まさに"場"を重んじる日本的組織ならではの現象だろう。

もう一つの核心が、"タテ組織"特有の序列である。

日本社会では、能力や年齢よりも「いつからその集団に属しているか」という時間軸が、序列を決定づける最重要要素となる。

いわゆる「同期」の概念が代表的で、同じ時期に入社した者同士は互いに対等とみなされる一方、後から入った人間はいかに優秀でも下位に置かれ、上位者に意見を具申しにくくなる。その結果、組織改革が停滞し、必要な意思決定が先送りされるケースも多い。

では、こうした日本型タテ社会のなかでビジネスパーソンが柔軟に行動するためには、どうすればいいのだろうか。

本書は、「複数の場に身を置き、唯一のタテ序列にすべてを委ねない」というアプローチを示唆する。

社内の序列に閉じこもらず、社外コミュニティや職能横断的なネットワークを活用することで、新たな視座や情報を取り込みやすくなるからだ。こうした複線的なキャリアや人的ネットワークを築く社員が増えれば、企業風土そのものにも変化が起こりやすいだろう。

半世紀を経ても色あせない本書の洞察は、リモートワークやグローバル化が進む現代社会だからこそ、いっそう輝きを放つ。オンライン会議によって地理的な制約は薄れても、見えない“場”への帰属意識やタテのヒエラルキーに縛られた組織の例は少なくない。

本書を読んで自社や自分の働き方を見直せば、私たちがどれほど"場"と"タテ"の論理に支配されているか、あらためて気づくことになるだろう。こうした省察こそ、序列外のアイデアを受け入れ、新たな価値を生む第一歩だ。

リーダーやマネジャーはもちろん、組織文化を変えたいと思うすべてのビジネスパーソンにとって、本書は強力な示唆を与えてくれるはずである。

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